Automne

スリー・ビルボードのAutomneのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.0
連鎖していく憎しみと終わりの見えない暗さ、それでいて登場人物は本質的な悪人がいない。
背負って生きていること、受け入れること、赦すことについて考えさせられた。
見終わったあとにじわじわ効いてくるような作品。重たいけれど音楽やカットはとても軽いしドラマみたいな感じで観れる。

人間どうしが関わり合って生きているコミュニティでどうしようもないことが起きたとき、それらの負のエネルギーは伝播して二度と元には戻らない。

アメリカ南部の言葉の荒さや伝統気質の古めかしい感じはクリントイースドウッド味があった。田舎町の狭さやどこにも行けなさ、やるせなさは『殺人の追憶』味があった。
ニューヨーク、キラキラ都会最新って感じのアメリカじゃなくて、南部の自然豊かな村社会を題材にしているのは面白い。無骨なファッション、筋肉、大自然、狭いコミュニティ。

いろんなセンシティブなテーマを背負っている作品ゆえ、社会派過ぎてやや説話的な展開をしたのはご愛嬌かもしれません。
普段から問題意識を持っていればそこまで驚くようなところはないのだけれど、トータルでほどほどにバランスがとれていて大衆的分かりやすさのある作品になっている。

映画を観てわざわざモヤモヤしたくはないので個人的には好みとは離れていたけれど、賞レースに向けてちゃんと“ウケる”題材盛り盛りの増し増しにしてるところ、そういった立ち回りはネトフリとかと似てる。全然クオリティ的には観れてしまうから良いのだけれど、社会派な作品をやること、大正義の看板を掲げることが果たしてエンターテイメントの行く末であるのかはやはり疑問がのこる。
ジャンルとしてはあっても良いと思うけど、こういう映画で埋め尽くされてしまったら映画館は楽しい場所ではなくなるような気がする。

ほどほどのクオリティであるからこういうことを考えるだけで、たぶん圧倒的なクオリティだったらまた感想は違ったような気がしている。
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