matico

スリー・ビルボードのmaticoのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.7
ふぅ。
炎が、心からはなれない。
よくもまあ、これだけ憎しみが連鎖するものだ。

暴力、放火、レイプ、殺人...
この映画の世界では、どんな犯罪が犯されても、誰一人として捕まることはない。

「まだ捕まらない」

—巨大な広告板の言葉は、すべてを物語る。

法が機能しない社会で、怒りと憎しみの連鎖が永遠に続く。いい加減捕まえてくれよ。

この荒れ狂う人間世界とは対照的に、
馬や鹿などの自然に生きる静かな動物たちが、スクリーンに映し出されるのが、印象的だった。

怒りと憎しみの連鎖を断ち切る方法はあるのだろうか。

映画は、そのヒントを一つのシーンに凝縮して見せる。

自分を半殺しにした警察官と、偶然にも病院の同室になった被害者。

この被害者が、警察官にオレンジジュースを手渡す瞬間、私たちは深い問いを投げかけられる。

—本当に憎むべき相手を赦すことは可能なのか?

どんなに混沌とした世界の中でも、
人間の心が持つ、愛と赦しの力を信じること。

この世界は不条理と矛盾に満ちている。
綺麗事だけでは済まない。
どうしようもない怒りと憎しみで苦しんでいる人もいる。

自分が同じ境遇になっても、果たして赦すことができるのか。

炎が、心からはなれない。
matico

matico