ふぅ。
炎が、心からはなれない。
よくもまあ、これだけ憎しみが連鎖するものだ。
暴力、放火、レイプ、殺人...
この映画の世界では、どんな犯罪が犯されても、誰一人として捕まることはない。
「まだ捕まらない」
—巨大な広告板の言葉は、すべてを物語る。
法が機能しない社会で、怒りと憎しみの連鎖が永遠に続く。いい加減捕まえてくれよ。
この荒れ狂う人間世界とは対照的に、
馬や鹿などの自然に生きる静かな動物たちが、スクリーンに映し出されるのが、印象的だった。
怒りと憎しみの連鎖を断ち切る方法はあるのだろうか。
映画は、そのヒントを一つのシーンに凝縮して見せる。
自分を半殺しにした警察官と、偶然にも病院の同室になった被害者。
この被害者が、警察官にオレンジジュースを手渡す瞬間、私たちは深い問いを投げかけられる。
—本当に憎むべき相手を赦すことは可能なのか?
どんなに混沌とした世界の中でも、
人間の心が持つ、愛と赦しの力を信じること。
この世界は不条理と矛盾に満ちている。
綺麗事だけでは済まない。
どうしようもない怒りと憎しみで苦しんでいる人もいる。
自分が同じ境遇になっても、果たして赦すことができるのか。
炎が、心からはなれない。