燕鷲

スリー・ビルボードの燕鷲のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.0
立て板に水のような進行で繰り広げられる導入部の設計が見事。観る者を一気に映画世界へ引き摺り込むストーリーテリングの上手さ、巧みさは驚異的ですらある。各国映画祭でこれだけ脚本が評価されているのも納得。

中盤以降の多分に教訓めいた筋書きは賛否分かれるだろう(クラーク・ピーターズが演じるあのキャラクターの登場はちょっと作為が過ぎた)し、最終的な締め括り方も果たしてあれで最良だったのかどうか分からない。
しかし、反レイシズム、反権力に終わらず、昨今の行き過ぎたポリコレや過熱するジェンダー論争(ここ最近の #MeToo 運動は明らかに暴走しているような気がするんですけどね)に対しても一石を投じているところはとても秀逸だったと思う。
傍観者でいることも罪ならば、怒りに任せて行動することもまた罪、という当たり前の再確認。人間は互いに清濁(善人と悪人の側面)を飲み込んで生きていくしかない。それは絶望であり、そして希望でもあるはずだ。



※物語を牽引する主演のフランシス・マクドーマンドのみならず、役者陣が皆素晴らしい。とりわけ、サム・ロックウェルの助演の枠に収まらない貢献ぶりには感心させられた。星半個をプラスして献上。
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