グラッデン

スリー・ビルボードのグラッデンのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2
序盤から物語の展開が全く読めませんでした。看板において取り上げられた事件の真相を追い求める物語に進展するわけでもなく、かと言って名指しで批判された警察署長が問題人物であるようには見えず、鑑賞しながら物語のコアとなる部分を探る状態が続いておりました。

結局「コレだ!」というものを見出せなかったのですが、個人的な視点としては、感情が周囲にもたらす目に見えない波紋を巧みに表現した作品だと思いました。

その意味では、作中の台詞に登場した「怒りは怒りを来す」という表現が作品に漂う雰囲気を端的に表現していると思いました。事件を知る人たちが感じる行き詰まり=閉塞感が被害者の母親の行き場のない怒りを呼びおこし、それが周囲に影響を与えることになります。そして、彼女に限らず、作中では登場人物たちの様々な感情が交差し、物語に幅が生まれていきます。

また、本作の舞台となったミズーリ州の田舎町が持つ独特の時間感覚が、残酷なまでに閉塞感を強化するようにも感じました。雄大な自然、時間が取り残されたような緩やかな雰囲気が息苦しさを感じることになるとは。語弊を招くかもしれませんが、鑑賞後、この場所こそ本作品の舞台に相応しいのだと思いました。

3つの看板からココまで物語が広がるというのは、非常に興味深く、繰り返しになりますが巧みな作りであったと思います。気は重くなりますが、また見たいと思う作品でした。