Aya

ガーンジー島の読書会の秘密のAyaのレビュー・感想・評価

3.7
#twin

Blackのteaがあることを知った本作…。

いつの時代も本とはなんとロマンティックな「モノ」なのでしょう??

始まって5分10分ほどで「この映画はアタリだ」って感じる時ないですか?

今作がそれ。

ロンドンを中心に読書会ツアーを行う売れっ子作家のリリー・ジェームズ。
今は誰もが認める作家だが、軌道に乗るまでは男性の名前でしか出版できない1950年代のロンドンが舞台。

これがまだフィッツジェラルド黄金時代より30年も後ってマジかよ…EU圏の世界線…。

ちょっと痩せすぎのクソ野郎(じゃないかもしれない疑惑)のマシュグがエラく高い声で編集者としてサポートします。

彼氏はアメリカ軍人のグエン・パウエル。
引越し先を探す彼女にマンハッタンでの暮らしを提案するグエン・パウエル。
鬼ほどでかいダイヤの指輪でプロポーズ❤️

そんな折、リリーの元へ一通のファンレターが届く。
手紙には彼女の本に書かれていたように戦争下でいかにして食料と文学を途絶えないか?を実践しているある島での暮らしが綴られていた。

肉とシェイクスピア、そしてパイを機に二人の文通が始まる。

手紙の主ミキール・ハースマンの村ではドイツ軍の占領下で厳しい生活を強いられていた。
しかし隠れて肉や酒、薬やパイなどを持ち寄りはじめ読書を通じて村人同士の絆が生まれ始める。

郵便のおじさんは小麦粉も牛乳もバターも手に入らない環境でジャガイモとジャガイモの皮を見立ててポテトピールパイを作る。

ドイツ軍の目をかわすため「読書会」と名乗り人々が集うことに理由をつけることにする。
そしてその嘘っこ読書会を通じて村のみんなは今まで触れることのなかった様々な本と出会う。

その手紙に感動したリリーは手紙の送り先であるガーンジー島で読書会を開きたい!と言い出す。
電車に乗り込む。

本は人を救う。

本に数われた人はまた別の人を救う。

本によって。


島に行くまでのリリー・ジェームズの華麗な女流作家と敏腕編集者マシュグの掛け合いがテンポ良く描かれるとこがもうアタリの香りムンムン。

島では目立つでっかいダイヤの婚約指輪をハンカチに結んで財布にしまうリリー。
なるほど。それだと指輪無くさないね!真似しよう。

でも市場があったりパブが賑わってたり想像してたより結構賑やかな島ねw
あと、私ビールをパインとじゃなくて取っ手のついたグラスで頼む英国人を初めて見ましたw

この話はエリザベスの行方へも繋がります。
ドイツ軍の占領と島民の貧困。
生きていくために、暮らしてゆくために人は思ってもいない行動に出る。

エリザベスの行方のきっかけを作った人物もまた悪人ではなくただの島民だ。

読書会で島のみんなと打ち解けポテトピールパイと自家製ジンを楽しんでいたところ、リリーのある発言が皆を恐怖のどん底に突き落とす。

「タイムズにこの読書会の記事を載せたい」と。

決死の思いで集っている皆は今までの雰囲気と打って変わって怯えてリリーを拒絶する。

読書会唯一の子供である〇〇。
彼にはなぜか母親がいない。皆が口をつぐむ。
そこで語られた子供たちの集団疎開と母親、エリザベスの行方…その計り知れない正確性と重さに憤るリリー。

戦争中に海に地雷を埋めるためにポーランドやロシアなどからきた奴隷の人たち。(捕虜以下)
戦争の悲惨さを描く描写でこういうの初めて見た。

密造酒のフレーバーがたくさんあって美味しそう✨

戦時下の1950年代を描いているのですが美術や衣装などがとてもいい。
実際にどうだったか、というよりは俺たちの自慢されたい1950年代戦時下のアイスランドの表現が美しい。
皮肉にも。

リリーは消えたエリザベスを〇〇の元に返すため、そして元来の作家という気質から書かずにはいられない。
読書会のことは伏せて。

エリザベスのことを調べると人々の口から様々な真実が明らかになる。

ほれはリリーの意図していた感動ストーリーとは違うもの。
彼女の知っている「ドイツ軍」とは違う側面だった…。

私は何度も書いているように、戦争を知らないおばあちゃんになると思って生きていました。

しかしイラク戦争が起こりなうロシアが戦争をしている。
皮肉にも今見るのにふさわしい題材の物語。

国民、軍人、難民、捕虜。
戦争にはあらゆる人々が携わりそして様々な絆が生まれる。
みなが「人間」であることに変わりはないのにからだ。

それが、なぜこんなにもすれ違うのか…。

この物語は愛を描いてはいるのですが、愛が戦争を越えるといったような綺麗事に描かれていないところがとても好感が持てます。

別に愛が戦争を超えてもいいんだけど、この物語は本を主軸にした戦争という特殊状況下での人と人との絆の話なので。

愛だけではない。

過酷な状況下で過ごす島民のシリアスなストーリーを作家的好奇心と本好きの仲間との出会い、そして彼女自身の強い意志で"取材"を重ねてゆくが不思議と他所者で島民とは違いすぎる彼女の立ち入りすぎる行動が邪魔にならない。

シリアスな話をしていたと思ったらロマンス好きの読書会友達から「恋バナプリーズ!」ってテンションになるのもラブコメ好きの私にはご褒美。

読書好きで夢見がちなバージンからは婚約を羨む言葉といつか自分にも本で読んだような素敵な人が現れるかも…という希望なのか確定させた「叶わぬ夢」なのか図りかねる言葉が。

一瞬好き嫌いが分かれるようなラブロマンス&同性同士の友情イチャコラかな?と思ったら、あらまぁなんとシリアスでロマンティックで現実的な。

脚本、上手過ぎだろ、おい…。
塩梅が絶妙過ぎる。

あと、グエン・パウエルがこんな普通にハンサムで優しく空気も読めて恋人想いで頼もしい男性として映画に登場したの初めて見た…うそ…声も落ち着いててめっちゃカッコいいやんか…大学で女の子口説きまくってた祖チン野郎は一体どこへ…

あの時もめちゃくちゃ男前でしたしね!
本当に俳優さんてすごい!
てか私が推してる人は本当にすごい!
私の愛も尊敬も深まる一方だよ!

先日のアカデミー賞の、アフターパーティーにも来てたし最近なんなの…
(ちなみにゾーイ・ドゥイッチも来てた❤️)

島と島民を愛してしまった彼女。
島を去る時、去った後のリリーの苦悩と表情は忘れられない。

彼女は最初の目的:ガーンジー島の読書会に参加する

を達成した。

そして次の目的:彼らの読書会を記事にする

に取り掛かる。
いや、取り掛からざるを得ない。

最初はみんなに知ってほしいと思った。
自分の感動を。
次に彼らの大切な人のために必要だと思った。
子供のために。

しかし今、彼女の筆を動かしているのは??

ラストの展開がややってかめちゃ性急なのはなんで…後10分長くてもいいからちゃんと見せて欲しかった。

この丁寧で仕事のできる脚本、監督、編集をはじめとする作り手たちが、物語の終盤中の終盤のリリーの心の変化という大切な見せ場をこのようなお粗末な描き方をしているとは考えにくい…

上映時間を短くするためにカットした?
としたらめちゃ解せない、と思った(T . T)

ガーンジー島、ロンドン、部屋、タイプライター、本、指輪、そして浜に着陸し飛び立つ飛行機とその座席。

美術素晴らし過ぎる…
もしこれがCGだとしても描写としての説得力があり物語状の登場"人物"として完璧である。

総じて良い映画であり良い物語であり、魅力的である。

論理的に100点満点のテストで例えるなら85点から90点。

ラストにめっちゃ不満があるものの、それ以外は見事。
ストーリーや映画的魅力に加え、その手管にやられました…

大好きだよ!

エンドロールではマシュグに❤️フラグが!!

旧?
Aya

Aya