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ブリグズビー・ベアのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2018年公開のデイヴ・マッカリー監督作品。脚本は主演も務めるカイル・ムーニーとケヴィン・コステロが担当。デイブ・マッカリーは、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンの夫。

アメリカの人気コメディ番組『サタデー中ナイト・ライブ』つながりのスタッフで製作されたコメディ・ヒューマンドラマ。映画愛にあふれた作品でもある。

赤の他人の夫婦に誘拐され、25歳まで監禁されていたジェームズの物語。かなり衝撃的な設定だが、それを上回るのがこの偽の親のキャラクター。ジェームズは、父親がジェームズに見せるためだけに個人で製作した『ブリグズビー・ベア』なるクマの冒険物の番組をずっと見て育つ。控えめにいってかなり変態。しかし本作は、この偽夫婦の異常性を全く咎めない。作中で逮捕されるが、この夫婦を悪人として描いていない。そこがとても斬新。

ジェームズは普通の世界に戻り、本物の両親と本物の妹と暮らし始める。世間は大騒ぎしているが、ジェームズもまた特に気にしていない。自分が変な両親に誘拐されて25年間外に出させてもらえなかったことをネタにできる。心が豊かで孫悟空並みに素直。異常な事件が人格形成に全く悪い影響を与えていない。その設定も新しい。

ハードな家庭環境で育ったにもかかわらず、普通に穏やかに生きている人は素敵だと思うので、この設定は嫌いではない。ジェームズの冗談はかなり面白いが、刑事もいい味出している。偽の父親役が『スター・ウォーズ』のルークを演じたマーク・ハミルというのもユニーク。

イヤミスやどんでん返し系のと作品にはないまっすぐさ。悪人がいない温かい物語なので、少し物足りなさを感じる人はいるかもしれない。
しかし、ふとジェームズが呟く「好きなことを諦めるなんて」「何にも知らないくせに」という言葉は強い。心理カウンセラーが一番ジェームズのことをわかっていないのは皮肉な話で、どこにでもあるほのぼのストーリーとは違う。はっきりとした主張と独自の世界が本作にはある。

CINEMASによると、デイヴ・マッカリー監督は『ブリグズビー・ベア』について「親切になる方法、親身になる方法、誠実になる方法、そして人々をその人の過去で判断してはいけないということを描いたつもりです」と語ったとのこと。

□参照
CINEMAS「『ブリグズビー・ベア』が大傑作である5つの理由!『スター・ウォーズ』のあの人が誘拐犯にキャスティングされた理由とは?」
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