高校生を描いた群像劇としてとても面白い作品だった。
文化祭の時に彗星が到来するという、大きな出来事を中心としながらも、そこだけにとらわれずに、その日に至るまでの高校生たちの姿がテンポよく描かれる。
しかも、人物造形と描写が抜群に上手い。
とりたてて特別なことがあるわけでもないのに、観ているうちに自然と人物たちが頭に入ってくる。
主人公のジュンとハナだけでなく、天文部のヨシアツ、ハタケ、カヨも、名前まで含めてすんなり受け入れられるのは、さりげないけどすごいなあと感じた。
特別な一日をめぐる高校生たち、という構図。さらに、どこか衝動的、刹那的にも見える様子は「台風クラブ」を彷彿とさせられた。
タイトルといい、描き方といい、コミカルな感じといい、監督はたぶん意識していたんじゃないだろうか。
一点を除いては、何かが起こる映画ではないのに、少しも地味に見えない。
それでいて、ギリギリのところで、わざとらしくもなっていない。
実際に高校にいそうな少年少女たちが、あり得そうな日常を生きている。
それはキラキラしてもいなければ、劇的でもないけれど、なにか心を打つ。
地味に淡々とこういうのを描いた作品は多いけれど、こんな感じでテンポよく描いて見せたのは珍しいと思った。
最後のファンタジックな展開は賛否がありそうな気もするが、個人的には納得したし、気持ちもよかった。
青春群像劇として、いい映画だと思う。