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ワンダーウーマン 1984のmickeyのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
4.4
ここ最近、毎年のようにスーパーヒーロー映画が公開されているので自分の中で「スーパーヒーローって(それぞれに事情があるとはいえ)戦ってばかりだし、好戦的過ぎるな」と思っていました。
だから、本作の人助け満載でワンダーウーマンだからできる決着の付け方は大歓迎。
さらにリチャード・ドナー版『スーパーマン』を意識した作りには胸が熱くなりました。個人的に、前作よりも1984年のショッピングモールに現れた彼女こそがスーパーヒーローとして世に現れたワンダーウーマンという気がしました。78年のスーパーマンの面影をそこに見た気がしました。
また『1984』の音楽も注意して聴いていると、ストリングスのリズムや管楽器の動きから『スーパーマンのテーマ』を感じることができます。メロディは違いますが、ハンス・ジマーがジョン・ウィリアムズを意識してスコアを書いているのは明らかです。
また、OPのセミッシラで流れる音楽もエンヤのコーラスを豪華にしたような(笑)祝祭感あるテーマにわくわくしました。これまでの『ワンダーウーマンのテーマ』をメジャーに展開した曲調はかなり好みです。
音楽繋がりだと、スティーブとの場面で流れるクラシック音楽はモーツァルト作曲の歌劇『フィガロの結婚』より『Voi Che Sapete』(恋とはどんなものか)です。
「喜びかと思えば、次の瞬間には苦悩になる」恋愛について歌った曲ですが、これはその後のダイアナの決断を示唆しているともいえます。
中盤にダイアナとスティーブの関係を丁寧に描いているので、ダイアナがワンダーウーマンとして覚醒する瞬間が非常にエモーショナルになりました。花火のシーン等はパティ・ジェンキンス監督だからこそ撮れたシーン。ザックやジョス・ウェドンはカッコいいワンダーウーマンを撮るのは上手いと思いますが、ダイアナの内面も丁寧に魅力的に描ける監督はパティ・ジェンキンスだと思います。強くてカッコいいだけではなくて、だからこそ彼女はワンダーウーマンなんだと思わせてくれるラストシーンでした。

ヴィランでは、マックス・ロードを演じたペドロ・パスカルの圧倒的な存在感にやられました。さすがマンダロリアン。良く分からなかったのが例の石の能力で、中盤から急に世界がパニックになっていたので「きっとこういうことなのかな?」と補完しながら観ました。効果が曖昧に見えたので、どういう能力でどうすれば解決するのか(石を壊すとか)が明確だと良かったなと。
もう一人のヴィラン、バーバラはアメスパ2のエレクトロに似ていますが、84年の男性社会における被害者という側面もあります。そこがエレクトロと違う。監督は、当時日常的にあっただろうセクハラや女性が学び仕事をすることがいかに難しかったかを、バーバラを通して描いていると思いました。だからこそ、劣等感を抱いていたバーバラが自信を持つ過程には共感できます。
しかし、だとすると本作の結末はバーバラにとって酷な気もしました。女性の生き辛い時代は変わらない、その現実と向き合うわけですから。そして、ダイアナは同じ84年に生きながらバーバラ達女性が抱える生き辛さとは無縁のように見えます。ダイアナはバーバラの痛みに共感することができるのか、そして争いではなく彼女を導くことはできるのか?
バーバラは次回作に登場するそうなので、どう決着を付けるか楽しみです。

批判されている部分も確かに理解できますが、ワンダーウーマンの物語にパティ・ジェンキンス監督は必要不可欠なピースだと思うので、アクション面や編集で優秀なスタッフを揃えて次回作に臨んで欲しいなと思います。
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