近藤啓二

007/ノー・タイム・トゥ・ダイの近藤啓二のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

「みなさま。
60年という長きにわたってご愛顧くださり、誠にありがとうございます。
コロナ過という大変な2年が、あっという間に過ぎようとしております。
本作品でお別れするにあたり、ぜひこれまでのお詫びを述べさせていただきたく、皆様の前に戻らせていただくことにいたしました。
もっと早く、この機会を設けさせていただくつもりではおりましたが、どうかお許しください。

これまで手前どもは卑しい本能の赴くまま女性を弄び、秘密兵器などと称したおもちゃで徒に命を奪うなど人権を軽視しながら、異常な暴力性をさも誇り高い存在意義であるかのように論点をすり替えて、その実、国家という暴力装置を傘にきて横暴な権力を振りかざすような人間でありました。

真の世界平和とは、全世界の人々の平等を達成し、この地上から完全に争いをなくすことであります。

崇高なるその理想から目を逸らせるため、世界中の名士が集う社交の場を馬鹿げた秘密結社にでっちあげてみたり、今回のように経営方針の異なる製薬会社をやり玉にあげてみたりと、過ちを繰り返してまいりました。
悪のレッテルを誰かに貼って叩けばいいというのは、本当に浅はかで恥ずべき考えであったと思います。
いじめをなくそう、と言いつつ、大の大人が多様性を認めず、価値観の相違を針小棒大に喧伝する事で、社会正義を追求しているかの態を振る舞うこと、それ自体がいじめそのものであることに見て見ぬ振りをしておりました。
そこには総括も自省もなく、まさに自己改革なき手前どもの未熟な精神であった、と深く反省しております。

それもまた現代社会における優劣賛美、勝ち組負け組というような階級闘争の意識が原因であることは明白ではあります。
世界平和を阻むものは悪ではなくこのどうしようもない、手前ども男の本能と呼ばれるものだと自己批判します。

手前ども男はただ存在するだけで害悪でしかありません。

もはや手前ども白人男性に残されているのは誠心誠意、真心をもって女性の皆様をはじめ、有色人種社会を含め社会的弱者に置かれた皆様にお詫びをすることしかない。
そのように結論した次第です。

本日まで、皆様の御目を楽しませるよう、手前どもが走り回らせていただきましたこれらのお役は、決して手前どもだけしかできない特別なモノ、というわけではございません。
そのように見えるよう、多くのスタッフやら準備などに支えられることでこれまで実現して参ったものであります。
もちろん皆様にも安全安心のなか、楽しんで参加いただけるようなものでございます。

橋の上から電線をつかんで命がけのダイブしているように見せているだけで、お子様にも楽しんでいただける安全な遊園地のアトラクションみたいなものでございます。
また白人男性だからパンチに威力がある、白人男性だから弾に当たらない、ということではなく、そのように相手役キャスト(特別に訓練されたプロであり、とても仲のいい友人たちです)がリアクションをしているだけで3週間も訓練せずとも、有色人女性の方でも楽に相手を倒せ、簡単に銃撃戦の爽快感が得られる、完全必勝のサバゲ―になっております。

これまで60年にわたり、このような楽しみを独占し、皆さまのご気分を害しておりましたこと、誠に申し訳ございませんでした。
金髪碧眼、白色人種で男の分際でありながら、世の正義を担う信念の人間、みたいな顔で尊大にふるまっていたことを恥ずかしく思います。

最後になりますが、私の目と娘の目は同じ青色ではございますが、私の目は薄汚いものを見すぎた汚れた目でございます。義兄の義眼と同じ見たいものしか見えない、がらんどうの如きつまらないものですので、どうかその点だけはご理解いただき、娘だけは皆様の温かい目で見守ってくださるよう、お願い申し上げます。
本日、これまで皆様の清らかなお目を汚してきた全ジェームズ・ボンドを代表して、6代目である私がこの通り、お詫び申し上げます。

誠に申し訳ございませんでした。」

と、半世紀以上にも渡って愛されてきた物語の主人公1人に土下座までさせておいてもまだ許さず、最期は誰かに触るだけで感染する病原体として焼き殺す映画。

しかも焼き殺されたのに、言い足らないことがあったら市中引き回しにでもするのか、いつか呼び戻される可能性まである。
近藤啓二

近藤啓二