タカシ

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのタカシのレビュー・感想・評価

4.5
『サーガの終わり』


最初はダニエル・クレイグは出演しないと言ってた。
監督はダニー・ボイルがやるはずだった。
新型コロナ。
そして前作から丸6年。

昨年観られていればまた感想は違っていたのかもしれない。
今は素直にダニエル・クレイグお疲れ様です、と言いたい。

そもそも007映画はジェームズ・ボンドという男を主人公とした物語でありながら彼自信にフォーカスが当たる事自体はほぼなかった。
理由はいろいろ思い当たるところがあって、彼にフォーカスが当たった作品「女王陛下の007」が大きくこけたためだとか、メインストーリーとアクションを描くだけでかなりの大作なのでそこにボンドの内面まで描く余裕がなかったためためではないか、とか(「女王陛下の」はしばらくの間上映時間がシリーズ最長だった)。

ダニエル・クレイグのボンドが画期的だったのは明らかにボンド自身にもフォーカスがあたっていたこと。
00ナンバー昇格にあたってどうしたとか本当は描く必要何にもないのよ、実は。

ただ上映時間は長大になる一方で、本作はなんと2時間40分?!
は~やれやれ。

ただ物語を進行させる装置としてのボンドであるならば、前作「スペクター」のエンディングで大団円だったはずだ。
あれの続きは悲劇にしかならないと我々は知っているから(「女王陛下の」の事ね)。
あれがダニエル・ボンドのラストなら何の不満もなかっただろう(作品自体への不満はべつにして)。

しかしダニエル・ボンドの五作目は作られてしまった。
あの「スペクター」のラストの後の来るべき時間軸から枝分かれして生まれた続きの物語とは?

つまり製作陣はダニエル・ボンド・サーガのストーリー上の完結編をきちんと作ろうとしている訳だ。

この作品に拒否感が強い人が少なからずいるのは分かる。
私もこれがダニエル・ボンドの三作目くらいだったら本当に嫌だったと思う(「スカイフォール」、ちょっと嫌だったもの)。

だが私はもうダニエル・ボンドは五作で一つの話なんだと思うようになってしまった。「慰めの報酬」は前作の続き、だし、本作はほぼ完全な「スペクター」の『後編』だ。

全五部にわたるサーガの完結編なのだ。
並大抵の事で驚いてちゃいかんのですよ。

作品自体は確かに長い。そこそこな粗もある。
それを補って余りある作品だと思った。

レア・セドゥとアナ・デ・アルマスは本当に魅力的。
特にアナ・デ・アルマスはサッと登場して場をかっさらって、特にボンドといい雰囲気になることもなく、仕事を全うするだけなのが凄い良かった(もちろん物足りないよ)。

クライマックスの長回しは見てるこっちまでヘトヘト。

後、予告編で死ぬほどこすり続けたシーンの登場するタイミングに結構びっくりした。
えっこのタイミングで?

逆にタイトルクレジットは登場まで死ぬほど時間がかかって「これが2時間40分の威力かよ」と唖然となった。ビリー・アイリッシュはそれこそ昨年公開なら気にならなかっただろうに、『今』観ると若干旬を外してる感があるね。

まあこんなボンド映画はおそらく空前絶後の大技でしょうよ。それにリアルタイムで付き合えた事にとりあえず今は感謝。

改めてダニエル・クレイグお疲れ様です。
長くてごめんよ。
少し感傷的になってるのさ。

劇場(字幕アトモス版)にて。21.10.08
2021#014
タカシ

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