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エロスは蒲団の香りの留のレビュー・感想・評価

エロスは蒲団の香り(2016年製作の映画)
1.0
映画は低予算の臭い

田山花袋の《蒲団》のエロ映画化。
あの糞小説《蒲団》をどのように料理したのか、と言う興味だけで見たのだが、糞はどう料理しようとやっぱり糞だった。
これを見ていて悲しくなるのは、画面から低予算、低制作費の香りがただよってくること。見ていて情けなくなる。あえて時代を特定できないような作りにしているが、セリフから考えるとどうみても明治後期から大正だろうに、小道具とか服装がどう好意的に見ても昭和っぽい平成にしか見えない。でいて『旅籠に泊まった』なんていうセリフが出てくる。
なぜ作家が懸想する娘はいつも洋服を着てるのだ?よく衣装を替えるし、どう見ても明治大正期のデザインじゃない。
なぜ作家はトンボの黄色い消しゴム付き鉛筆で原稿書くのだ?普通万年筆だろ?『株式会社 トンボ鉛筆』は大正2年創業だぜ!
娘の恋人からくる手紙の封筒には切手が貼ってないし、赤い「速達」の文字は明らかにボールペンで書いてある。
家屋も古く見えるようにしているのだろうが、壁のコンセントはおかしいよ。天井の電灯の二股ソケットだろ?
作家の周りには昭和に刊行された本がずらり。
まあそういうのすべてがお金がなかったんだろうね。と見ていてわびしくなる。
裸になる娘、「人気セクシー女優・由愛可奈」らしいのだが、本当にこの人「人気」なの?作家の奥さん役の山田キヌヲのほうがずっといいけど。
今頃、田山花袋の『蒲団』を映像化する意味なんてまったくないよ。
2007年に田山花袋を読んだ感想を貼っておく。
少女病 明治40年 
蒲団 明治40年 
私のアンナ・マアル 大正6年

面白く読めるのだが、小説としてというより作家のいやらしさ、人間性の低さに我慢がならぬ。「少女病」はもっと長くてもいいのに、あっという間に主人公は死んでしまう。
「蒲団」「アンナ・マアル」も、花袋は女弟子に一生こだわっていたのだろう。情けない。
結局彼は、恋愛結婚したにも関わらず、数年で妻に飽きてしまい、妻も子供にも愛情を注がず、若い女に情欲を燃やしていたのだ。で、それを自己弁護している。「蒲団」なんか妻や特に子供の描写なんかほとんどなくて呆れるばかり。女性を低く見ているし、彼はつまらない人生おくったのだろうなあ!

*読み返してみたら小道具にだけ文句つけてるが、もっと本質的な部分が出鱈目な事を言わないといけなかった。
主人公の作家、弟子入りする文学を志す娘にリアリティがまるでない。特に娘。ツルゲーネフだの《人形の家》だのセリフで言ってるけど、匂いも嗅いだ事ねえだろ?!と感じる。
こんな糞設定なんかとっぱらっちまえばいいんだよ。この人を文学を志す娘にキャスティングするのは無理。むしろ妻役の人の方がそれらしい。この妻が「お情けを」と、ある晩夫に求めるのに拒否られるのが可哀想。むしろここで妻と夫の絡みを入れた方がまだ良かったのでは?作家の妄想だけで娘と自分や娘と恋人の絡みが挿入されるが、全編妄想エロ映画にするべきだった。《過酸化マンガンの夢》みたいな。
留