Adele

かもめのAdeleのネタバレレビュー・内容・結末

かもめ(2018年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

ずっとずっと長いこと気になって観たかった本作
しかし、日本では長い間未公開状態が続いたが、今回ついに配信サービスで観れるようになり、歓喜して観てみました

まず、初めに恥ずかしながら、チェーホフの原作は未読だし、劇も観たことはないです
また、シアーシャやアネット・ベニング目的の人も多いかと思いますが、わたしはコンスタンチン役のビリー・ハウル目的です

さて、本来のストーリーですが、今作はストーリー云々よりも人間の奥深い闇や心理に伴う言動が見所なのではないでしょうか
基本、病んでる人や不幸な人しか出てこないように思えた

ベニング演じるイリーナは大女優だが自己中で母親失格、はっきり言えば毒母
自分の息子の才能ですら、軽蔑して潰すような発言をする
また、何がよいのかさっぱりわからないボリスという作家男に完全に依存していて、彼がいないと生きられない重い女 
見栄と虚栄心の塊の病んだ女

イリーナの息子コンスタンチンも不幸な男
せっかく才能があり、開花してきたのに自分自身とその才能を信じることができないし、周りもサポートしてくれる人はいない
恋人のニーナですら、彼の作品を批判、馬鹿にする
イリーナの兄の言う通り、コンスタンチンも町に住んだり、海外を周ればその才能は更に開花しただろうと思う

ニーナもまた、名声に取り憑かれた愚かな女
若い頃は誰しも夢がある
そして、それはキラキラと眩く、必ず栄光と名声が手に入ると信じて止まない
野心を持つことは良いことだ
しかし、それに恐ろしいあまり取り憑かれてしまい、大事なものを失った後では遅すぎるのだ
更にニーナが愚かで汚点なところは若さ故に名声に取り憑かれ、その名声を手にした男に恋をし、捨てられ、自分の才能をバカにされたのにも関わらず、まだその男を愛しているというところ
また、女優としての才能もさほどなく、結局は名声を手に入れることができず、地方周り
ニーナも愚かで悲しい女だ

マーシャもコンスタンチンを強烈に愛しているものの、その片思いは永遠に報われることはない
あまりにもコンスタンチンを想うあまり、半分病んでしまっているし、お酒もやめられない
また、こんなに強烈な恋心は好きでもない相手と結婚すればおさまるだろうと思い、結婚してしまう、浅はかでかわいそうな女だ

1番わからなかったのはボリス
あんな男のどこがいいんだ????
まぁ、悪い男は昔から女性を惹きつけ、モテるというからね…
イリーナに対する態度もニーナに対しての仕打ちも最低ゲス野郎だけれど、それでも2人はボリスをいまだに愛しているのだから不思議で仕方がない
何度も言わせてもらうが、あんな男どこがいいんだ?????

また、話が変わって、ファンであるビリー・ハウルですが、今作も素晴らしい演技でした
ちょっと自信なさげで動揺する表情がよかった
1番素晴らしかったのは、後半、ニーナと再会後、奴をまだ愛していると告げられた時の表情と別れ際にニーナがコンスタンチンの頬に優しくキスをした後の表情
目の動きの演技が本当に素晴らしく、溜息もので何回も巻き戻して見てしまった!!!
ビリー・ハウルは日本ではまだあまり知られていないけれど、本当に素晴らしい演技をする役者なので、もっともっと彼の素晴らしさをわかってくれるファンが日本のみならず、世界中でもっと増えてくれればいいなと思います

ラストのアネット・ベニングの表情もまた素晴らしい!!!
母にはわかる、何が起きたのかわかっているんだというのがとてもよく現れている表情であっぱれだった

ラストは物悲しいけれど、あれでよかったのでは、と思ってしまった
せっかく才能が開花し始めたのだが、生涯愛する女に振られ、自分自身を信じることもできない、自分がどこに向かっているのもわからない、ましてやあんな田舎に一生閉じめられたままなら、あれはあれでよかったのかもしれない
コンスタンチンの叔父が病床でコンスタンチンに話した言葉が気になった
『後悔していることは、3つ
若い頃、作家になれなかったこと
結婚しなかったこと
ずっと田舎で、町に出なかったこと』
これって、叔父のことだけではなく、コンスタンチンにも当てはまることである

今作は日本ではあまりまだ知られていないし、未鑑賞の人も多いと思う
しかし、自分は長い間楽しみにしていただけあり、見応えがありました
複雑とまではいかないが、巧妙な人間関係
そして、親子や身内といえども分かり合えない心境や人間の深い闇や若さ故の愚かさ等、第三者として興味深く観ることができた
可能ならば、DVDかBlu-rayも購入したいくらい気に入ったが、日本盤では発売されていないらしいので、海外から輸入しようかと思うくらい、個人的には刺さる作品でした
Adele

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