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かもめの教授のレビュー・感想・評価

かもめ(2018年製作の映画)
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映画を観るようになってから、どうにも演劇が苦手になり、俳優の演技を堪能するという「役者の自意識」が強く感じられるようになって特に苦手になってしまった。
特に、俳優の演技の形が、この日本では「アニメっぽく」なる傾向が加速し、役柄を演じるから、役柄をキャラクター化するという芝居の形が増えたことによって余計に「名作戯曲」がフィーチャーされることは余計に忌避感につながっている。

そんな中で、日本の演劇界の「ルーツ」として定番中の定番、チェーホフの「かもめ」の映画化。
演劇的な映画であることは間違いないが、映画を通して、演劇における「芝居の旨味」みたいなことを体感するには非常に良くできた映画になっている。

恐らくだが、新味が乏しいほどに、オリジナルの戯曲の流れやテイストをなぞっていると思われる作劇。
ただ演じられるのは舞台の上ではなく、映像の中なわけで、その舞台と映画の違いとしての違いは意識され、映像美には工夫が凝らされてもいる。
しかし、それは恐らく意図的なまでに限定的で、本作はチェーホフの描こうとした芸術にまつわる愛や憎悪に狂わされている人々の運命についてを「再現」することに注視している。

古典がなぜ、古典として生き長らえているかと言えば、それは繰り返し繰り返し再演されても色褪せない妙味があるからで。
本作を観ていると、ほぼ全てのシーン、全てのショットの「演技」特に「セリフ」を通して俳優たちの基礎体力や蓄積された技術によって感情が変換、再現されているのを感じる。

俳優たちにとっても、俳優たちがどうしてもやってみたいと思う台詞回し、仕草、表情などの快楽に満ちている。
それが自己陶酔的にも見えないわけではないが、それ以上に「芸の極致」として見応えの方が勝利している。
やはり何事も基礎的な教養や技術は重要だと「ハッ」とさせられる映画。
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