てるる

少女は夜明けに夢をみる/ 夜明けの夢のてるるのレビュー・感想・評価

4.0
先日観たサウジ映画「少女は自転車に乗って」が良かったので、タイトル似てるこちらも観てみた。

そんな軽い気持ちで観た自分の横っ面をぶん殴られたような衝撃。
どちらかといえば「存在のない子供たち」に近い。

強盗や殺人、薬物の売買や買収で逮捕されたイランの少女たち。
その少女たちが入れられた隔離施設に密着したドキュメンタリー。

家に戻るよりも施設にいたいと言う少女。
その手首には生々しい虐待の跡。

罪状は?と聞かれて数々の犯罪をあっけらかんと話す少女たち。

「銃には慣れてるけど人は撃ったことない。殺人はなかなか出来ないよ。でも性的虐待をした叔父なら殺すけどね」

と笑顔で話す少女。
そんな状況を受け入れているのかと思えば全くそんなことはなくて。

監督に同じ年頃の娘がいることを知った別の少女の笑顔が曇る。

「私はゴミの中で育ったのに、その子は愛情を受けて育てられてる」

その言葉が忘れられない。

当たり前だ。
そんな状況を本当は受け入れられる訳がない。
彼女たちは強がっているだけ。
そうしないと生きていけないから。

こんな年端もいかない女の子達を救えるのは大人たちしかいないのに。
その大人たちが少女たちを追い詰めた。

少女が宗教の矛盾を投げかける。
なぜ平等ではないのかと。
その答えは明らかに彼女たちの救いになんかならないことを女の子の表情が物語る。

原題は「Starless Dreams」
監督は問いかける。
夢はあるか?
その答えに星(希望)は感じられない。

それでも出所した少女の笑顔は眩しかった。
その笑顔がいつまでも続くように祈ることしか出来なかった。
てるる

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