JunichiOoya

少女は夜明けに夢をみる/ 夜明けの夢のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

2.0
イランの若い女性たち(刑事犯罪裁判中の人?)が収容された更生施設? 矯正施設? にカメラを入れたドキュメンタリー。

「撮影許可までに◯年!」とかいう惹句はもうすぐ公開の『プリズンサークル』の例を見るまでもなく常套の宣伝文句なのだが、「だから何?」としか反応できない。着手までに時間を要するのは映画に限らずどんな表現手段でも半ば当たり前の前提では?

映画で気になったことは二つ。
まず、彼女たちはカメラに対して「大学の先生が講義の素材としてカメラを回してる」という意味のことを一度ならず話すけれど、監督のプロフィールを拝見する限り、少しギャップがあるように感じる。映画の製作意図が正確に施設や収容者たちに伝わっているのかしら。

もう一点は、実はもっと大きな疑問なのだけれど、カメラは何故「塀の中」目線に終始するのだろうかということ。施設側への取材(カメラを向けたインタビュー)はおそらく厳しく制限されたのかもしれない。でも7年間頑張って撮影交渉した根性があるなら、管理側への目線を徹底させることも必須なのでは、と思う。

そして何より、施設を出た後の収容者たちの生き方への取材が何故ないんだろうということ。
施設内でのインタビューが繰り返し掬い取るように、彼女たちの「家族」や「社会」への取材がなければ、事の実際は見えてこないし、結局はこの映画が安手のヒューマニズムを招来するだけに終わってしまう。

迎えの「家族」とともに施設を出る収容者が、不安げに泣き笑い顔で何度も何度も振り返り、カメラに顔を向ける時、どうしたってカメラは彼女と一緒に塀の外に出るべきだったのではないかしら。

当事者目線を持たないドキュメンタリー映画はダメだと思う。
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