フィルモワ

顔たち、ところどころのフィルモワのレビュー・感想・評価

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)
3.5
▪︎自称《Photograffeur》、つまり写真でグラフィティするJRと、アニエス・ヴァルダによる道連れアート・トリップ。壁の上とスクリーン上、表現のフィールドは違えど、レンズを通して他者を理解したい、そこに光を当てたい、という互いの思いが共鳴するのも、なんだか頷ける⠀

▪︎ふたりはフランス各地へ趣き、炭鉱や農家、工場や港で働く普通の人々(ときに動物)の顔を、風景に大伸ばしで焼き付けていく。大企業の広告並みの規模で、消費に結びつかない表現が出来るあたり、やっぱりアートの土壌があるんだなぁと、ちょっと羨ましい⠀

▪︎並行して、写真家ギイ・ブルダンとの思い出の浜辺や、カルティエ=ブレッソンの墓地、そして近頃は音信不通のゴダールの家まで…。いつしかこの旅は、ヴァルダの人生の残像を辿るような意味をも持ち始めたようだった⠀

▪︎ぼやけていく視界。揺れだす意味。見ることで生きてきた人間の、瞑目する覚悟のようなもの。見せてくれてありがとう⠀