jam

コンプリシティ/優しい共犯のjamのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

時の流れに身を任せ
あなたの腕に寄り添い
一度の人生それさえ
捨てることも構わない
だからお願いそばにおいてね
今はあなたしか見えないの


私もソラで歌えたテレサ・テン
中国では、みんな歌えます…
はにかみながら、リュウは言う

僅かな夢を抱いて、江南省から日本にやって来た
"チェン・リャン"
山形の蕎麦屋の仕事を斡旋された
"リュウ・ウェイ"となり、老いた蕎麦職人と娘、二人で営む「そば処 ゆら」で修行を始める


上映後、監督とヒロインの赤坂さん登壇のトークを聴いて
毎年、中国からの労働者のうち、7000人くらい行方不明になる人がいる
その7000人というよりも、7000分の1の青春を描きたかった


確かにこれは
シャイで親思いの優しい青年の青春
怪しい仲介人から、もっと割のいい仕事を紹介されても首を横に振る

言葉少なく、けれど愛情を持って指導してくれる
"お父さん"との触れ合いが、彼の中で少しずつ大きな絆となった頃
身分詐称がバレるのに怯える彼の毎日に
中国留学を目指す葉月という一筋の光が射す

一緒にずんだ団子を食べて
自転車に二人乗り
お祭りの夜空いっぱいの花火

文字を打つよりも早いから、と
連絡はいつもボイスメッセージ


日本に来る費用の為に、働き詰めだった祖母が亡くなるのと、葉月の留学が決まるのは同じ頃…

そして、最も恐れていたことが…

リュウの不法就労に気付いてからの"お父さん"の無骨な優しさに心打たれる
北京で蕎麦屋さんを開き、一緒に働くという叶わない夢

警察の追及から逃す為の"出前"
風車の音 波の音がごうごうと響く海岸で

北京の葉月からのボイスメッセージ

北京の映画館で観たの
何の映画か、当ててみて?
返事がないから言っちゃうよ

「君の名は」


…彼の名は

「葉月、僕の名前はチェン・リャンだよ」

いつもの少し寂しげな瞳の奥に
凛とした勇気を感じて
jam

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