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おとなの事情、こどもの事情のGreenTのレビュー・感想・評価

3.0
都会の人が田舎に引っ越して、カルチャーのギャップに悩むという話です。

ジーナとマックは、フォトグラファーとライターという、アーティスティックな夫婦。しかもジーナは白人、マックは黒人なので、異人種間結婚でもある。ローティーンの息子・クラークは見事なアフロなのだが、ニューヨークのブルックリンではなんの問題もなく、馴染んでいる。

ジーナが大学のアート課教授になって、一家はワシントン州にあるローマという田舎町に引っ越すことになる。アーティストは健康保険がないなど生活が不安定なので、田舎町で大きな家も買えて収入も保証されて良かった!ということになるのだが・・・・

黒人だからってめっちゃ差別されるのかなと思ったらそういうことではなく、街の人たちはウェルカムでいい人ばかり。でも人種差別っていうのは、無意識の中にあるってことが良くわかる映画です。

例えば、息子のクラークはアンブロジアという12歳くらいの女の子と友達になるのですが、この女の子は、「とうとう黒人がこの街に来たわ!この街は白過ぎるから丁度いいわ!」みたいな、カッコいいから、珍しいから、みたいな理由で友達になる。

お父さんのマックは、近所の白人の男の人に「ライターなんだ!僕も物書きなんだよ、プロじゃないけどね・・・」と言われ、仲良しになるんだけど、この白人男性は他の人に、「マックは目をつぶっていたら黒人だとはとても思えないようなヤツなんだ」という。つまり、黒人は学がないハズなのに、マックは話が分かる、と褒めているんだけど、黒人は学がない、とステレオタイプが存在することが分かる。

それとか、笑っちゃったのは、田舎のティーンの女の子たちが夢中な女ラッパーは、ものすごい下品な露出系なんだけど、都会から来たクラークは全然好きではない。

で、お母さんのジーナは、ジェンダー研究系のフォトグラファーなので、そういう女性差別的なエンタメに息子を晒したくないと、田舎の子供たちとの交流を禁止しようとする。

でもさ〜、友達の影響を受けたり、性的なものに興味を持つのはある一定の時期しょうがないところはあるよね。で、お父さんと息子が結託してお母さんに逆らうと、「私のことClassist だと言うの?」って言うんだけど、Classist って初めて聞いたよ。要するに、低俗な人のことを「low class(クラスが低い)」って表現することがあるんだけど、そういう風に「クラス分け差別する人」ってことだよね。

あと、「クラークに窓ガラスを割られた」と責め立てるアンブロジアの金髪のお母さんの言い分を聞いてマックは即座に「黒人だからそういうことをする子だって決めつけている」って決めつける(笑)

そんな風に、みんなが無意識に持っている差別意識を浮き彫りにしていくところは面白いんだけど、引っ越してきた一家が街に馴染む、までは描いていなくて、あまりにもドラマがなさすぎて面白くない。

最近こういう、人種差別とかカルチャーの違いを描く映画って、なんだか腰が引けてる気がする。まあ〜私みたいな口うるさい人たちに「これは人種差別的だ」とか批判されるかもと思うと、製作者側は遠慮しちゃうんだろうな。

しかし「映画が面白くなくなるからあんまり意見しない」って言うのも違う気がするし、難しいところですね。でも今って一番過渡期なのかも。トランプの出現で差別主義者が上っ面を装う必要がなくなって強気に出てきたから、「差別問題根深いな〜、本気で頭使って考えないと解決しないな」ってみんな気がついたところだもんね。

追記:
『おとなの事情、こどもの事情』ってのは、ひどい邦題だなあと思います。原題の "Little Boxes" は、"put in a box" というのが「型にはめる」という意味なので、登場人物がみんな、「小さな箱」に相手をはめ込んで見ているよ、って意味なんじゃないかと思います。
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