Clara

おとなの事情、こどもの事情のClaraのレビュー・感想・評価

3.0
NYに住む黒人×白人の両親と息子の3人家族が、母の転職を機に白人ばかりの小さな町にお引越し。新しい町での生活は大変。戸惑いながらも新天地で自分の居場所を探していく。

どこにいても差別が日常とはいえ、大都会NYに比べれば小さな町での生活はより差別にさらされる。無自覚な差別や「私は公平よ!」といういい人風差別や、特別視という名の差別も多くなる。大人でさえそうなのだ。子供の世界はまた違う。黒人の友達がいることが自慢でしかたなく、差別をしない(と思い込んでいる)自分が好きだったり。
終身雇用での教授職を得た母は、高水準の教育のもとで教養を身に付けた人。小さな町の専業主婦にとってみれば、NYからきたそんな女性に劣等感を抱かずにはいられない。またその逆もしかり。

この作品では、悪意のある人種差別は描かれていない。上記に書いたように「差別は日常」というのは、誰にとっても実はそうなのだということを示していると思った。
多様な差別とそれに絡む劣等感などの感情面をそれぞれの立場から描きつつ、新天地での苦労や「本当にこれでよかったのか?」という思い、馴染もうとするほどに自分自身を見失ってしまう様子も描いている。まさにそこにあるのは多様性。そのさり気なさがよかった。

家族それぞれが新天地でのストレスを大爆発させたその時、肩の力がぬけ、またみんなが一つになる。すると不思議と、物事はいい方向にすすみ落ち着ける。この変化は、ラストの自宅シーンを見れば明白。そしてそれが気持ちよかった。
Clara

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