きのっぴ

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のきのっぴのレビュー・感想・評価

4.2
実話に基づく映画、それも政治的な映画、ましてや実録的な作品はとても評価が難しい。
と思いつつ・・・この映画の脚本力、演出力、映画自体が持つパワーみたいなものに混乱、ある種の戸惑いのようなものを感じてレビューできず、10日ほど置いてから2回目鑑賞。

2回目見終えて・・・初見の印象と基本的に変わらない。
ただ、ひょっとしたらこれはある種ものすごくドキュメンタリーなのではないかと確信。
モデルになった人たちは確かにいる・・・とは言えエンターテインメントに昇華するために主演のタクシードライバーの背景や葛藤、特にラストに至る手に汗握るシーンは完全に劇的でカタルシスある展開。
物語化されてはいるものの、そんな市民がいたのではないかという背景を感じさせる、良い意味での偽ドキュメンタリー感。

ドキュメンタリーとは決して客観性ではない、という森達也氏言うところの「ドキュメンタリーは嘘をつく」的思考を劇場映画に置き換えたかのような作品。

そんなことを思いつつ、役者陣も主演のソン・ガンホはもちろんタクシー運転手のユ・ヘジン、学生のリュ・ジュンヨルを筆頭に本当に味のある役者さん多数だったし、色々考えてしまったものの、1本の映画として最初から最後まで全く飽きさせることない素晴らしい映画だったことは間違いない。
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