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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のxavierのレビュー・感想・評価

4.5
"あの日"に隠された、もう1つの真実が明かされる…
1980年の韓国。ソウルで11歳の娘ウンジョンを一人で育てながらタクシー運転手をしているマンソプは大金に目がくらみドイツ人記者ピーターを乗せて光州に向かう。マンソプの機転で見事に検問をくぐり抜け
2人は光州に入るが、現状は散々たるものだった。そんな中でもピーターは「危険だからソウルに戻ろう」と言うマンソプの言葉を聞かず、撮影を始め…
ストーリーはこんな感じ。
初めて"光州事件"の事を知ったのは、何の気無しに借りたDVD"光州5・18"を観た時だったなぁ…
この作品と同じ様に弾圧される学生たちが描かれていて、凄いショックを受けたし、泣かされた作品でもあった。

今回のこの作品、前半はそういう状況を薄っすらとは描いているものの、そう深刻なものでは無い。どちらかと言うと、大金に目がくらみ光州へとやって来た何の状況も知らないマンソプを淡々と描いている。
ところが、中盤TV局が軍に襲われ火災が起きた事件が描かれる頃からガラッと雰囲気が変わっていく。
学生たちのデモ隊に容赦なく銃弾を打ち込む兵士たち。それが無抵抗な者であっても白旗を振りけが人を助けようとする者であってもだ。その状況は、まさに地獄絵図だったなぁ…

マンソプは最初、デモする学生を疎ましく思っていた。光州に入った時もそう。
でも、ピーターに通訳を頼まれた学生ジュシクと行動を共にする中、彼らに対する考えが大きく変わっていく。そんな中、私服軍人に追われたマンソプとピーターをジュシクは身を挺して守る。その時もうるっと来たんだけど、その後が……号泣だった。
"1987、ある闘いの真実"やソン・ガンホ主演の"弁護人"でも描かれているが、その頃の警察や軍部はクソで自分たちの都合の悪い事や悪い人物に対しては徹底的に叩き潰そうとする。今回の作品も酷かった。

そんな中でも、軍部におかしいと思い行動を共にする人々も出てくる。同じタクシー運転手らがマンソプやピーターを助けるんだよね。彼らに取っては得ではなく損に当たることなのに…
それが人間本来の姿なんじゃないかな。ケガを負った人が目の前に居たら、助けようと思うもんね。

でも、こういう作品を作れる韓国映画界って凄いよね。それもソン・ガンホやユ・ヘジンなどの人気俳優を使うんだから。
そこら辺は羨ましい限りだよね。多分、日本だったらこんな作品を作れないから…
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