景

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜の景のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

光州事件を扱う重い内容なのに、コッテコテの人情映画になっているのでかなり入りやすい映画でした。その分少し軽い印象はあるけど、これはこれで振り切って作られていていいんじゃないかと思う。どんなにベタな展開でもぐっと来るシーンは多かったし、退屈もしないし面白かった。ちなみに一番ぐっと来たのは、終盤の光州から出る時の検問で、ソウルのナンバープレートに気づきながらも兵士が見逃してくれるシーンかもしれない。ああいうのに弱いんだよな……。あと光州を出たマンソプが食堂で後ろめたさに耐えきれずやけ食いするシーンもいい。とどめのように差し出されるおにぎりがまた泣かせてくる。

ただ、終盤のカーチェイスはこの作品のトーンとはややミスマッチなよーな? あとマンソプの独り言の多さは最後まで気になった。ソン・ガンホが演じるなら、ここまで心情をわざわざ口にさせる必要はなかったと思う。

逆にピーターは普通なら主役にされてもおかしくないキャラクターだと思うけど、ドイツ人ということもあって台詞は少ないんよね。ただ、最初は「お客さん」らしく後部座席に座っていたピーターが、最後は助手席に座っているのは「戦友」って感じで良かったな。なのに結局、この二人の英雄が再会できないままだったのは切ない。

しかし「政治に無関心な市民は為政者にとって都合のいい存在でしかない」というのは今の日本を見ているとほんっとーーーによく理解できるだけに、暗澹たる気持ちになる。
景