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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のtakaoriのレビュー・感想・評価

4.5
2024年104本目

パレスチナ問題をめぐるデモが世界中で激化し、一方で「デモに効果なんてあるの?」という冷笑が幅を効かせる今こそ見たい映画である。こういう「普通の人が見せる勇気と正義」を描く映画は素晴らしい。ソン・ガンホの演技も本作はとりわけ出色なのではないかと思う。最初は「デモするために大学に行ったのか?」「裕福な人間の道楽だ」と鼻で笑っていたキム運転手が、光州での悲惨極まる弾圧を目にして「俺はどうしたらいい?」と苦悩し、決断する姿が泣ける。「彼ら」の姿から「この私」のあり方に眼差しが向く、その気づきを鮮烈に見せている。いまデモや民主主義を冷笑している人々も、現実を知って変わる可能性があるという希望を示している。同時に、ほんの四十数年前まで軍事独裁政権が支配していた韓国には、日本のように長く「平和」が続いた国にはない緊張感や、政治への警戒心があるのだということもよく伝わる映画である。
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