1980年、韓国。
軍人がデモ隊を大量虐殺し、世界的大問題となった光州事件。
戒厳令が敷かれていた光州市では、近隣の市へ通ずる道路は全て通行止めにされ、電話回線も断ち切られていた(当然のことながら当時はまだネットも普及していない)。つまり市内の一切の情報や流通がシャットアウトされていたのだ。
同じ韓国内のソウルに住む市民でさえ、光州市で起きている軍部の悪行を知らないほどであった。
そんな噂を聞きつけたドイツ人ジャーナリストのピーターが、現地の惨状を世界へ伝えようと満を持して光州市へと向かうことに。
そして、その彼を光州市まで送り届ける役を買って出たのが、本作の主人公、ソンガンホ演じるソウルの名もなきタクシー運転手、マンソプである。
光州での惨状を何一つ知らないマンソプは、単なる金目当てでピーターをタクシーへ乗せて光州へ一目散に向かう。
しかし、そこで彼らが目にしたものとは…
===========================
実話に基づいた映画は、その事実や歴史を事前にどれだけ知っているかによって面白さが左右されることが多々あります。
もちろん知識があるに越したことはないけれど、ストーリーをその場で追う楽しみこそ映画の醍醐味の一つでもあるので、説明的な描写と脚色のバランスが非常に難しいのです。
本作があまりに画期的だったのは、現場の状況を何も知らない無知な男を主人公に置いたことです。
冗談めかしたコミカルな立場から、最終的に大きな心情の変化を抱えてソウルに帰ってくるマンソプ。
観る人は、自然と彼に感情移入や自己投影をすることが出来て、後半の人間ドラマやアクションを最大限に楽しむことが出来ました。
日本版のポスターからは全く想像もつかない展開に息を飲み、涙腺は崩壊しました。
町山さんがラジオで「韓国版マッドマックス」と言ってたのにも納得。
今のところ今年一番です!!!
p.s.劇場でここまで号泣したのはいつ以来だろう…