伊藤チコ革命的cinema同盟

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜の伊藤チコ革命的cinema同盟のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

158.
光州事件を題材に実話をエンターテイメント化。思ったのが、契約書とか様々な言葉が日本語と同じ点があり、意外に感じた。

作品自体はとても丁寧な作り。前半はコメディ調なんだけど主人公や周りの人間がDQN過ぎて感情移入できず。イライラする箇所も多かった。
状況を説明せずにDQN主人公を責める周囲はちょっとね。
でも他の方のレビューを読んで改める。当時の光州は情報統制化におかれ、外部に情報は全く流れず、それどころか、フェイクニュースが流れている始末。
ちなみに主人公は保守的なセコイ小市民で、光州の人々と真逆の存在にいる。テレビの情報に間違いはないだろうというか興味がない人物で、光州で真実を聞き、愕然とする。この辺も後々の定食屋での伏線となる。
無関心とフェイクニュース。重要なキーワードだ。

後半、光州事件が本格派してくる時に、物語はシリアスになってくる。

本作の最大の美点は伏線の回収能力。何気ないエピソードが後々鮮やかに回収されている素晴らしさはマジな話古今東西南北、類を見ない。
車の修理、光州人の優しさ、熱い運ちゃん、靴、そしてググって明らかになった終盤の兵士。
あの兵士は名前を呼んでほしかった。でもよく見ると名札がついているので、あれに字幕が付いていればさらに評価があがる。

クオリティ高かったよ。なんだかんだ楽しく見れて重厚な内容なんだけど軽々しくないヒューマニズム。2時間半の尺が適切で起承転結も麗しく、wikiで予備情報必要かもだけど、知らなくても最初のそれでなんとかわかるかな?コメディ調から自然に歴史的事件に入り込んでいく様は並大抵の脚本ではない。
でも時々主人公の運転態度が気に入らない、運転中泣くなと茶々入れる。
カーチェイス胸熱激アツ。王道なんだけど泥臭さが逆にいい。ハデなクラッシュを見ると邦画でも「これくらいやってほしい…」と詳しくないのにディスってしまう。
ラスト15分しめやかな雰囲気なの、ジャーナリストが死ぬんじゃないかと思ってしまったのは、ホラー映画の見すぎ。

この物語は光州事件を取材したドイツ人ジャーナリストに協力した謎のタクシー運転手のエピに基づく。彼らは対立しながらも友情をはぐくんでいく。
まあ、正義のジャーナリストな描かれ方しているけど、目立つところでカメラ回しているのは思慮の浅さを感じてしまう。

最後、ジャーナリストは運ちゃんに連絡先と名前を聞くんだけど、運ちゃんは何を思ったのか、偽名と嘘の住所を教える。たぶん後々の災いを避けるためだと思う。それで、運ちゃんは歴史の隙間に消えてしまう。
そんな終わり方なんだけど余韻を十分に持った展開に突っ込みどころはあるけれども、十分な完成度を盛った作品には違いないよ