金に目がない韓国のタクシー運転手が、
ドイツ人バディとともに成し遂げた命懸けの英雄譚。
1980年、軍部の独裁に対し市民によるデモが起きていた広州。
当時の政治情勢を知らなかったので、
はじめは結構とっつきにくかった。
11歳の娘と貧乏暮らしをしているシングルファザーのタクシー運転手キムは、
大金欲しさにドイツ人ジャーナリスト・ピーターを拾い、光州へ取材に行くことに。
そこでは、軍が酷たらしい大虐殺を行なっていた。
無抵抗な市民だけでなく、
白旗挙げた市民でも構わず撃ってくれる。
同じ国民の間でなぜこんなが行われていたのか。
現実にあったかと思うと眉を潜めざるを得なく、泣けてくる。
この悲惨な事実を全世界に伝えるため
記者ピーターはカメラにを回し、キムはサポートする。
キムはそもそも政治に無頓着で娘との生活だけが生きがいだったが、デモをする他人を見過ごせなかった。
しがないタクシー運転手に見えて、
自己犠牲をいとわず、頭が上がらない人格者だった。
ソウル来たキムに突っかかってきた光州のおっさんタクシー運転手もまた使命に燃える戦士だった。
軍人車に追われるキムたちのピンチに駆けつけ、捨て身でタクシーでぶつかっていく。
漢気に胸が熱くなるが、ただのタクシーが勝ち目のない戦いを挑んでいるので結末が見えて心苦しかった。
あのときの決死の行動に出た勇敢なタクシー運転手サムは、街に溶け込んでいる。
どんな絶望的な状況でも
人のために義を尽くす人はいて、その人に賛同する人はどこかにいる。
希望に溢れた作品だった。
敵対する軍の中にもサムの行動を見過ごした人もいたのがよかった。
職業、立場、国籍に関係なく勇気があれば世界を変えられる可能性を感じさせてくれた。
あえて難点を言うとすれば、
映画のジャケットがキムの破顔一笑なので、
ハートウォーミング系と勘違いしてしまうところ。