emily

ライオンは今夜死ぬのemilyのレビュー・感想・評価

ライオンは今夜死ぬ(2017年製作の映画)
3.9
南仏コート・ダジュール、老年の俳優ジャンは死を演じられず悩んでいた。撮影が中断され、かつて愛したジュリエットの暮らしてた屋敷を訪れる。そこで彼女の若いままの幻覚を見、


ドキュメンタリーのようにカメラが寄り添い、鏡越しのジャンを映し、生と死を交差させる。港町の海の青、街並み、青を基調とした色彩は瑞々しさと寒々しさが交わり、不穏な音楽が異なる世界を埋め合わせる。

かつて愛した女性が住んでた家 無音でゆっくりとカメラが追う。陰影が美しく、浮かぶ真っ赤の花、生活臭のないその空間でホラーのような空気感を出し、青を基調とした壁紙、洋服、室内灯で過去を照らし、幻想は確実に男を死を感じさせ、子供達との日差しの中での時間が真逆の生を感じさせる。

映画を撮ってる子供達、そこでは"演じる"事でなく自由な感情が溢れて生で満たされている。純粋なインタビュー、彼の過去が子供達の映画により蘇る。ブルーを基調しながら子供達との時間にはユーモアと生があり、きらびやかな光に包まれる。思い出は勝手に美化され、美しいものとして生き続ける。その止まった時間を動かし向き合い、自分の生と死を見つめ直すきっかけとなるのが、子供達だ。生きることは死ぬこと。死は生きた先に訪れる。そう生きないと死は来ないのだ。生と死と老いと若さ。両極のものが詩的に絡み合い、喜びが満ち溢れる。
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