ベルサイユ製麺

悪魔祓い、聖なる儀式のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

悪魔祓い、聖なる儀式(2016年製作の映画)
3.3
何かドキュメンタリーを観ようと思い立ち、当初は『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』を借りるつもりだったのだけど、気がついたらコレを手にしていました。…仕方ないのであります。ドリスを着る事は生涯無さそうだけど、悪魔はそのうち付き合いきれなくなるかもしらんし。

“主はサタンに聞いた どこから来た?
サタンは答えた 地をあちこち這い回っていました
ヨブ記”
…ピンと来てませんが、格好良いので引用。呼ぶ気?サタンを⁇

舞台はシチリア島。著名なエクソシスト、カタルド神父の行う儀式の様子や神秘のベールに包まれたその生活に密着取材した、日常系ほのぼのギャグムービー。カタルド神父は、青くも甘くもない平均的なイタリアのおじちゃんといった風。
彼の噂を聞きつけ自選、他薦問わず、全国からスーパー悪魔憑きッズがわんさと押し寄せるのだ!
…とか、軽くふざけていこうと思ってたのですけどね。
ちょっとコレは許容範囲を超えるMUNAKUSO悪さだ…。
カタルド神父が、凄く普通のおじちゃん。よく法事で凄く若い僧侶のお話を伺うことが有りますが、カタルド神父より彼等の方がよっぽど達観しているように思える。
神父は、彼にしか分からない法則で悪魔憑きの症状とその対処法を見極めていきます。だいたいの場合は水をかけたり、お塩をふったり、言葉責めにしたり…。自分には悪魔祓いの知識が無いので、一見適当に見える。ミニコントっぽいな…。
悪魔憑きの症状は、個人的にはホルモンの異常や解離性人格障害とかに見えるし、ミサで次々と奇声をあげだす人々は集団ヒステリーなのでは?
…とか言ってもしょうがない。とにかく自分は悪魔の事なんか分からないし、カタルド神父は本職のエクソシストなのだから。教会に来た人に「職場が給料払ってくれない」と生活笑百科みたいな事まで相談されるカタルド神父。理屈で言い負かされそうになると邪険に追い返すカタルド神父。そんな風に振る舞うのが経験に裏打ちされた一流エクソシストの嗜みなのかもしれない。
…でもですね、例えば或る場面。悪魔憑き認定をされた人物が身体の不調を訴えて問います。「病院に行くべきでしょうか?」「いや、家族の信仰が足りないからだ。必要無い。」…そうなん?しかし別のシーンで、カタルド神父は骨粗鬆症やコレステロール値の改善の為の薬を使っている事が示されるのです。彼は信仰が決して万能では無いし、現代医学が必要である事を認識している。にも関わらず、身体の不調を悪魔憑き“だけ”が原因だと断定している訳です。…はぁ?
ある悪魔憑きの方(殆どの悪魔憑きさんは、普段は普通で、発作の様に急におかしくなる)は「どの神父さんも違う事を言うし混乱するよ」と言います。またある者は「神父さんは、俺が悪魔に憑かれて暴れている時しか診てくれないのか⁉︎」と問い、無視されます。…この辺りを見ていて、自分の頭の中にはひらがなでも漢字でも三文字で表される、有る属性の人種の事が思い起こされてしまうのです。

終盤、映し出される、大規模なエクソシスト育成学校。神父姿の若者達がぞろぞろ歩きまわり、学食(?)で儀式の事など話し合っている。ハッキリ言ってその辺の大学と何ら変わらない風景。普通の若者が、社会経験が圧倒的に不足したまま、専門学校を出て、知識だけでエクソシストを務める。
最後、字幕で、世界中でエクソシストの需要が爆発的に増えている事が説明されます。なんか全て合点がいきますね。ひらがなでも漢字でも二文字で表される行為。

自分が感じたMUNAKUSO悪さの根元を端的に言い表した言葉が、本作のホームページのコメント集の中に有ったので、ソレを転載してレビューを終わります。誰の言葉かは秘密だよ☺︎

「慢心と欺瞞に満ちた神父たちの繰り広げる茶番は抱腹絶倒だが、彼等の愚行自体が苦しみを生み出しているという意味で極めて悪質である。ヘイルサタン。」