アガサ

悪魔祓い、聖なる儀式のアガサのネタバレレビュー・内容・結末

悪魔祓い、聖なる儀式(2016年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

行列ができる悪魔祓い神父の日常に密着!
リアルすぎるぼやきの数々が、「しょせん縁のないキリスト教の話」ではなく悩める者を救おうとする親切すぎるおじいさんの苦悩として胸に響く。
心療内科にもサジを投げられた人々が、困った時の神頼みとばかりに続々訪れる教会。
余りに多いため「お悩み相談は遠くから来た人優先」と距離で制限すれば、近所だけれど頻繁に来ている人が「数ではこっちが上」と怒り出す。
四六時中かかってくる電話。
さばき切れない悪魔憑きは受話器越しにやるしかない。
神父に依存しすぎてストーカーと化す信者。
せっかく「祓った」のにすぐ帰ってくる「悪魔」。
そりゃとりあえず「家族全員で信仰しろ!信心すれば全部うまく行く!」って言いたくもなるわなー。

ちまちま祝福して行く手間を省いて「ここにあるもの全部に祝福を」で済ませたり、お水に食塩どばーっと混ぜた食塩水を「聖水だー!」っつってスプーンで家中にジャバジャバまき散らしたり、「部屋が汚い!なんだこの服の山は!全部破壊しろ!」って乱暴な指示を出したりしたくなる気持ちもわかる。 
「その服、クローゼットから不審な音がしたので悪魔がいるかもと思って全部取り出してたんですけど…」という住民の声はスルーしてもしょうがない!返す刀で「このクローゼットの上にあるぬいぐるみも全部破壊だ!」と追い討ちをかけてもしょうがない!だって悪魔のせいなんだもん!

「子どもさんに悪魔が憑いてしまったのはお母さんに信心が足りないから」とか「旦那さんの浮気相手?会社の人?職業は秘書だな?」と女の職業を決めつけたり(実際は建築家)、おじいちゃんの価値観が昔のままな部分が気になったりもしたけれど、自分の生活を犠牲にしてでも一人でも多くの人を救おうとふんばる姿は立派だと思うし、過労で倒れないようご自愛いただきたい。

悪魔にしょっちゅう憑かれている常連の女性が唸り声をあげて椅子を投げつけるダイナミックなシーン、振り上げた椅子を目の前の神父さんに当たらないよう(聖品にも当たらないよう)近くに落とすのが、親しき仲にも礼儀ありって感じでいいですね。

様々な問題を抱えて「悪魔憑き」になった人々がいくらお祈りや聖水を浴びて「祓われて」も、根本的な金銭問題や人間関係にはなんの変化も改善もないのでまたすぐ「戻って」きてしまうのは当然といえば当然。

年々増えているという「悪魔憑き」。
世の中の流れを見ているとまず減ることはないだろうなあと思うし、神父さんと「悪魔」との闘いは永遠に終わらないのだろうことがつらい。
アガサ

アガサ