矢吹健を称える会

拳銃残酷物語の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

拳銃残酷物語(1964年製作の映画)
3.7
 宍戸錠のフィルモグラフィー中でことさら傑作というわけでもないとは思うのだが、しかし非常に鮮烈なシーンがあることで忘れがたい作品である。

 改めて見直すと、ガレージでの銃撃戦や、橋脚での銃撃戦の陰影などさすが日活といいたくなる素晴らしさ。現金輸送車襲撃の顛末もツイストが効いていて面白い。女性の扱いがいまひとつ。

 で、個人的に一番好きなのがラスト手前、宍戸錠が敵の親玉を殺すシーンである。例によって宍戸錠が先に銃を向けており、相手は命乞いをしながら拳銃を取り出そうとしている。相手がさっと構えるが早いか、宍戸錠はすばやく倒れこみ、お互いほぼ同時に引き金を引く。……とまあ、これはよくある描写だが、このとき宍戸錠は、まだ予断を許さない状況にもかかわらず、タバコをくわえたまま仰向けに寝そべって、ちょっと宙を見つめるのである。でゆっくり立ち上がる。このふてぶてしさ! その後の捨て台詞も最高なのだが、さすがにそこまでネタバレはしない。

 エースのジョーのような小粋な役もいいけれど、こういうハードボイルドで暗いキャラクターを演じたときの宍戸錠が本当に好きだった。