映画 泣き虫しょったんの奇跡
観て良かった
年齢制限の壁を越えられず奨励会退会という挫折を経て史上初のプロになった瀬川晶司五段の自伝的作品を、同じくプロ棋士を目指し奨励会を途中で退会し夢諦めた豊田利晃監督が描く将棋映画
これだけでこの作品の説得力がどれ程のものになるのかは観る前から想像できた
素晴らしかった将棋映画「聖の青春」がリアルに視覚等の着色で迫力を加えていたのに対し、この作品はひたすらリアルを追及した映画に思えた
プロ棋士というものが誰が見てもとても憧れるような、目指すような目標に見えない地味で息苦しい奨励会という過程
人生、人格を写し出すような将棋指し、勝つためには自分の人生、人格を否定するような将棋をしなければならないという葛藤
そういう奨励会での人物模様が細かく描かれる
「何がいいんだ、将棋なんて」と思う人沢山いると思う
この映画を見ていてもあまり表面に出ていない「将棋が好き」という気持ち、これが全てだと思う
プロを目指す者として奨励会退会は「将棋を好き」を捨てる事
退会した者が将棋界に全く興味を示していないのは、しょったんの仲間がしょったんの活躍を全く知らなかった、というシーンに鮮明に描かれてた
将棋が好きという気持ちを失わないように藤田(小林薫)が尽力する
三段から四段への高い壁、奨励会を退会したものが再びプロに挑戦する事は奨励会にいる者、プロ側からも反対が出るのもよく分かる
ただハードルは高くてもほんの少しの可能性でも道が開ければ、将棋界のみならず将棋好きにとってどれだけ世界が広がるだろう
だから「将棋が好き」を貫いた「しょったん」の功績は計り知れない
あまり波のないストーリー展開に対し凄まじい豪華俳優の出演、予想していたものに反して自然だった、むしろだれ一人欠けてはならないような人物達を登場時間関係なく見事に生ききっていた
プロ棋士を目指す者とそれに関わる者の言動をリアルに、そしてその思いがしっかりと観客に届く良作だった