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花筐/HANAGATAMIのやのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
5.0
大林作品お馴染みの、少し安っぽいコラージュじみたCG演出、不自然で芝居がかった演技と台詞回し、序破急の三部構成。
あくまでも虚構であること、映画であることに強く拘っている気がして、それは大林監督が作品を撮る上でのポリシーなのか、それとも戦争を題材にしたからこその優しさなのか、どっちなのかなと考えたりした。

"ゆきずりの まぼろしの 花のうたげ くるしくも たふとしや"

青春、いや、人生はすべてゆきずりなのだと思った。ゆきずりという言葉は今時、大抵刹那的だと言ってわらったり、非難するニュアンスで使われることの方が多いだろうけど、これほどまでに人間の一生という一瞬間を、表すことばが他にあるだろうかと思った。

劇中、何度か寺山作品を彷彿とさせる画があったり、ラストシーンで年老いた俊彦が「僕の青春はかくれんぼの鬼のようであった」と述懐したのは、まさしく『田園に死す』の「かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭」からの引用であるように思えた。

好き嫌い分かれるだろうけど、一番好きな青春映画になりました。美しく燃える命のほとばしりを観た。この目で、たしかに観ました。
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