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カランコエの花のaeuのレビュー・感想・評価

カランコエの花(2016年製作の映画)
4.7

この作品を初めて観たときは本当に衝撃的だった。
たった39分?印字ミス?なんて思ってしまう短編映画だけれど、その39分に余す事なく全てが詰め込まれている。
たった39分だから是非とも観て欲しい、そう思う作品。

生徒役の役者さんたちが皆凄く上手。話すトーンや間の置き方や表情、なにもかもがリアルだなあと思う。

そして何より、この作品のメッセージ性の強さ。


【以下、軽くネタバレ有です】


余計な事をしてくれた、あの生徒はただ、自分の気持ちを否定せずに話を聞いてくれる、それが嬉しかっただけなのに。
そう思う気持ちもないと言えば嘘になる、だけど先生もきっと「あなたを守りたい」と思っただけだった、悪気はなかった。だけどああいう、想像力の足らないポジティブな考え方は、時に凶器になってしまう。それが怖いなって思う。

あの生徒の好奇心もわかる。軽い気持ちだった。でもそれが目の前にリアルに、ひとの顔が見える状態になった時、反省できるあの生徒は、一足遅かったかもしれないけれど、これからの未来を思えば早くに気付けてよかったね、って思う。

なにより、あまりにも不本意に引き金を引いてしまった某生徒のつらさが本当にしんどい。
「あなたを守りたい」勇気を出して守ろうとした。けれど咄嗟に出てしまった言葉は、相手のそれを否定してしまう言葉だったから。傷付けたい気持ちなんて微塵もなかったのに。こればっかりは本当につらいな。

二人乗りの沈黙も凄かったよなあ。
いつもと同じような顔で笑うから、言い出せなくなった気持ちも凄くわかる。

きっと当事者たちは、その先の未来、きっと強く優しくなれるに違いない。


こんなに短い作品なのに、こんなに沢山詰まりに詰まっている。本当に凄い作品だ。
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