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カランコエの花のQTakaのレビュー・感想・評価

カランコエの花(2016年製作の映画)
4.0
始まりは、少女の告白だった。
それは、喜びと幸せに満ちていた。
その笑顔を何故受け止められないのか。
子供たちには、難しすぎる課題かもしれない。
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エンドロールに、その告白が有った。
それは、画像の無い、会話だけで。
でも、その喜びと幸せに満ちた笑顔が浮かんでくるようだった。
(なんと素晴らしい映像表現か。)
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物語は、残酷に展開して行く。
それは、本来、そんなに難しい事では無いはずなのに。
それは、喜びに満ちているはずなのに。
大人の言葉と、子供たちの心がシンクロしない。
子供たちの戸惑いが、彼ら自身の心を乱す。
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黒板に書いたのは、本人。
それを見て、みんながざわつく。
人一倍、この事にからんでいた男の子の態度が一変する。
彼は、何かに気付いたのかもしれない。
こうして、子供たちはこの難題にそれぞれの答えを出して行くのだろう。
それにしても、この問題は子供たちが向き合うには難題過ぎる。
もっと簡単に、容易に取り組める事を大人が考えて行かなければいけないね。
それは、大人にも難しい問題なんだから。
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こんな問題、私の子どもの頃に有っただろうか?
今の御時世、コレが世の中の当たり前になっているのだから、子供たちも大変な時代に生まれたものだ。
ただし、それを無視しても、曲解してもいけないわけで。
そういう意味で、この問題を映画を含めて様々な表現に見る事が増えている。
それは、様々なアプローチでもあろうし、挑戦でも有るのだろう。
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4年前の映画。
キャストは、今、スクリーンを彩ってくれている面々だ。
そんな彼らが、その若さばかりでは無く、しっかりとこのテーマ”LGBT”に取り組まれたのだと思う。
そういう彼らの姿から、今日の活躍を見ると、がんばってきたんだなぁと思う。
俳優達のスタートラインを見ると様々な発見が有る。
この映画の主役は、今田美桜さんなんだけど、一番良いところを持って行ったのは笠松将だったかな。女の子の物語かと思わせておいて、男子が一番子供っぽい中学生の頃の気付きと変化を捕まえるのは、監督の巧さだと思った。
多分、拾えていない部分で、女の子達の会話や仕草にもいろいろ表現されているのだろうな。
中川駿監督は、この前年に”尊厳死”をテーマに「尊く厳かな死」を撮られている。
社会的なテーマを”映画”として表現するのは簡単じゃないと思う。
ともすると、教育番組みたいになっちゃうかもしれない。
本作もそうだが、しっかりとテーマを取り込んで映画に出来てしまう監督の次の作品も楽しみだ。
笠松将さんは、去年のMOOSICLAB2019の作品『曇天街』の主役で、この夏全国で上映される。
コロナ騒ぎも少しずつ落ち着いて、またイイ映画がいっぱい見られるかな。
映画館に行きたいね。
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二回目鑑賞
(ネット配信の場合、こういう事が出来てしまう。)
この映画の中で印象に残るシーン。
少女が自転車の二人乗りで夏の夕暮れを走るシーン。
バス停で向き合う会話シーン。
その二人の頬を撫でるのは、暑さと涼しさが混じった、多分心地良い風だったのだと思う。
やっぱりイイ映画でした。
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