ちろる

女の一生のちろるのレビュー・感想・評価

女の一生(2016年製作の映画)
3.4
フランスの文豪ギイ・ド・モーパッサンの名作を実写化したドラマ。
モーパッサンの中でも特に人気のあるこちらの作品、しかし悲劇の連鎖が止まらず観ていて苦しくなる女の一生。


男爵家の一人娘として生まれた女性が、夫である子爵の不貞をきっかけに波乱の人生をたどる主人公ジャンヌ。

旦那のジュリアンは男爵家のメイド、ロザリと関係を持ち、ロザリは妊娠してしまう。
が、両親や神父の説得もあり、ロザリが男爵家を出ることで、ジャンヌはジュリアンのことを許すが、それも束の間、ジュリアンは男爵家が懇意にしているフールヴィル伯爵夫人と関係を持つ。
ふたりの逢瀬を目撃したジャンヌは、相談した神父からは黙っていることは罪であると諭され、ふたりの仲のことを書いた手紙をフールヴィル伯爵に出し、ふたりの仲に激怒した伯爵はふたりの命を奪ってしまう。

その後シングルマザーとなったジャンヌは、息子を溺愛し育てる。
だが、成長した息子本人が、アメリカで事業に失敗して、まるでオレオレ詐欺みたいなやり方して金を無心するという悲劇。

何を一体見せられてるのだろうか?という不幸っぷり。

時代ごとにおそらくこのジャンヌに対する読者の感情は違うが、
今の時代なら前半で離婚して、独り身に解放されてジャンジャン♪と物語が終わってしまうが、時代がそれを許さず、ジャンヌは不貞夫にただ仕える不遇な時間を費やす。
夫に服従する妻こそが良き妻だと教育する時代であったとはいえ、この教育がジャンヌの何を助けたというのだろう。
自分を愛し、慈しむことのできぬ人間に共感できるはずもなく、何なら裏切り者であるメイドのロザリの図太さの方が私は共感できる。

幸せに生きることを選ぶことと、清く生きることは悲しきかな相反する。

人生の岐路においてどれだけ「自分で選択してきたか」が大切になってくるのだと思い知らされる。

映像は、手ぶれ感のあるアップを多用し、まるでドキュメンタリーのようなタッチで臨場感を与える。
スタンダートサイズの狭い画面が、ジャンヌの抑圧された世界をうまく表現していた。

バッドエンドではない代わりに、清々しくもないお話、始終苦しくなるので好き嫌いははっきり分かれるでしょう。
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