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ファム・ファタールのtakのレビュー・感想・評価

ファム・ファタール(2008年製作の映画)
2.6
ソン・イェジンは「私の頭の中の消しゴム」以来、僕はお気に入りの女優。清純派なイメージが強い彼女が悪役を演ずるというので興味本位で選んでみた。う、うーむ。韓国映画の暴力描写は過剰なイメージがあるけれど、これも例外でない。冒頭いきなり自動車の派手なクラッシュ。金属バットのような警棒を手に警察官が車のガラスをたたき割り、ギャング?と思われる連中を引きずり出して殴る殴る殴る。縄張り争いの果てに、裏切り者のスリの指をつぶそうとする方法にしても、警察の取り調べのやり方にしても。観ているこっちまで「痛い、痛い」と口に出してしまいそうな過剰さ。男優ばっかりの映画だったら、普段の僕なら途中で観ることを放棄したかもしれない。それでも最後まで観たのは、ソン・イェジンあってこそ。

スリ集団を束ねる会社組織のトップを務めるペク・チャンミを演ずるのがソン・イェジン。彼女は刑期を終えて出所してきた伝説の女スリ、マノク(キム・ヘスク)を再び仲間に加えようとするが、頑なに拒否される。マノクの息子、デヨン(キム・ミョンミン)は武装スリ集団撲滅をめざすチームに属する刑事。出所したマノクは、子供の元を訪れるが過去を清算するのは難しいことだった。チャンミを怪しいと睨んだ警察は、彼女の身辺を調べ始める。スリの縄張り争いも激化していく中、ライバルとなるスリ集団のボスが彼女の組織を脅かし始め、事態とからみあった人間関係は悲劇的なラストへと突き進む。

韓国映画にしてもドラマにしても、登場人物の相関関係が複雑なものが多い。だが、決して難解ではないのは脚本の巧さだと思う。この作品に関しても、マノクを頼りにしてきたチャンミ、チャンミを追う刑事がデヨンという人間関係がスリリングな要素となっている。そして最後にもうひとつの人間関係が明らかになって映画は終わる。だが、思わずツッコミを入れたくなる過剰な演出にちょっと冷めてしまうのも正直な気持ち。

宣伝文句や紹介文にあるようなラブサスペンスでは決してない。だって、デヨンとチャンミの間にまったく愛はないもの。見どころは、助演賞を受けたマノクの演技。それにソン・イェジンのファッションかな。テレビドラマなどでは過剰に飾らないものが多いが、この映画では濃い化粧に派手なデザインの衣装で、これまでとは違った魅力をみせている。
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