槙

緑の牢獄の槙のレビュー・感想・評価

緑の牢獄(2021年製作の映画)
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不勉強で恥ずかしながらまったく知らなかったのだけど、明治〜昭和にかけて西表島には炭鉱があり、そこで働く者には朝鮮や台湾からの移民も多くいたらしい。日本通名・橋間良子さんも炭鉱で働くために養父と共に移民してきた。
生きてきた人生は間違いなくあるのだけど、「西表炭鉱の歴史」と括るときに軽視あるいはないものとされてしまう女性たちの人生。彼女に当時の話を聞いたり、彼女の日常を追ったりすることで土地と一人の人間の記憶に迫る。

映像がとても美しく、何も知らなければただ綺麗と感動することで消費してしまいそうな景色。最初見ながら再現パートいる……?ってなったんだけど、何度も挿入されるそれを見るうちに現代のあの場所に生身の人間いる画を見せられることはこの作品にすごく重要な意味があるように思えてきて、そう感じながら見ていた。
橋間さんは顔や体をクローズアップで映すこと、老いてぎこちなくなった身体の動きを俯瞰で映すことを繰り返す。さらに、通称“アメリカさん”という突然、彼女の家を間借りしにきた青年(彼自身も14歳の時に突然父の思いつきで日本に移住してきた)との交流。物理的には近いけれど精神的には全然打ち解けてなさそうな。そういう“お客さん”的な人が彼女の生活をつかのま横切るところも見せることでわたしのような何も知らない外部の人間にも入りやすい作りになっていたと思う。
そして、そういうひとつひとつから説明ではなく立ち上がってくる歴史と人生。
素晴らしいドキュメンタリー映画作品だったと思う。監督の1作目も見たい。
槙