逃げるし恥だし役立たず

追われる男の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

追われる男(1954年製作の映画)
3.0
列車強盗に間違えられた流れ者のマット・ダウ(ジェームズ・キャグニー)と若い男のデイビー(ジョン・デレク)との師弟関係での交流と別離を描いた西部劇。
前半の岩山と河川や山間を走る鉄道、後半の砂漠や荒野や河川の激流などヨセミテ国立公園での映像は西部劇の中でも突出しており、大自然の中で高低を活かした演出は見事の一言。列車強盗の冤罪やスウェーデン人移民の娘との出逢い、ディビーの奇跡的な回復や保安官就任の経緯、ジェントリー強盗団との因縁など御都合主義のストーリー展開に違和感があり、二転三転する脚本は上手いとは言えないが、不器用と真面目を前面に出した主人公に西部劇特有の説得力と安定感がある。
変な邦題になっているが、原題の『Run for cover』は主人公が言う「Most people run for cover ~」に由来して「多くの人は自分のツラい境遇を立て直そうと逃げずに走り続ける」の意味。本編は原題にある通り、更生や良心を前提とする性善説と真逆の死刑や悪意の性悪説に主人公が葛藤して苦悩する。其の意味に反してディビーはマットの親心に沿わずに悪の道に走ってしまうのだから情けは人の為ならずより女の第六感に従うべきであっただろう。