YaN

パパはわるものチャンピオンのYaNのレビュー・感想・評価

4.8
フィクションとはいえ、『怪我をして第一線を退いたレスラーがマスクを被って悪役レスラーとして戦っている』という物語に新日本プロレスが全面協力をしているのがまず凄い。

『子供の視点から観るプロレス』の解像度が意図的に下げられていて、「大好きなパパが悪いことをして皆に嫌われている」ことの悲壮感がより強調されている一方で、最初から会場にはゴキブリマスクのファンが大勢居るし、おそらく殆どのファンがゴキブリマスク=大村孝志(過去の大人気レスラー)であることを認識したうえでブーイングをしているように見える作りになっていて、大人の目線と子供の目線を画面内に上手く両立させていて良かった。

孝志自身もメインイベンターに戻れず、ヒールレスラーとして生きるしかない自分に嫌気が差し、仕事にやりがいを感じられなかったが、祥太と共に『好きなことを仕事にする尊さ』にもう一度気付いていく過程に感動した。

予告ではクライマックスのように描かれていたマスクを自ら脱ぐシーンが実は中盤だったという仕掛けも、その後の展開にも熱くなった。

プヲタとしてはミチコの全てに共感するし、祥太とのサイン交換でゴキブリマスクがZ-1クライマックスに出場すると知って泣き崩れるシーンでは貰い泣きしたし、最初大村孝志と遭遇した際に、たぶん気付いてはいたんだろうけど動揺とパニックで声をかけられなかったところや、祥太にすぐ敬語になったところがすごくミチコらしくて好き。

全試合、みんな大好き野上慎平アナの実況が聞けるのもたまらないし、試合はもちろん選手の演技シーンが観られるのも嬉しい(カントクの演技が上手過ぎる)



新日本プロレスファンなので評価はだいぶ甘くなっていると思う。

それでもプロレスを題材にした作品ではこれに勝るものはそうないと思う。たくさんの人に観てほしい。




最初ドラゴンジョージと大村孝志のタイトルマッチにミチコがゴキブリマスクのタオルを持って来ていたのが少し引っ掛かった。(ミチコなら当時買った大村孝志Tシャツとタオルで現場に来るだろ)
でも、「いや、ミチコなら『昔の強い大村孝志』より『今の弱い(弱くない)大村孝志(ゴキブリマスク)の方が強い!!!』っていう強火解釈でゴキブリタオル下げて来そうだな」と思えたのは、作品と題材に好意的過ぎるからだろうか。
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