CANACO

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

2017-2018年公開のタイ映画。チュティモン・ジョンジャルーンスックジンさんは、これがデビュー作だったらしい。

天才女子中学生・リンが、父親の勧めである高校に奨学生として入学することから物語は始まる。リンの父親は教師で、物欲がなく勤勉。リンは父親と二人で暮らしている。
高校で知り合った女友達・グレースから「家庭教師になって」と相談を受けたが、教えても成果が上がらない。一定以上の成績をとらなければ演劇部で活動できないというグレースに同情して、試験中にテストの答えを教えてしまうことから物語がうねり出す。
グレースの彼氏・パットが金持ちのボンボンだったことから、二人からビジネスとしてカンニングに協力してほしいとリンは持ちかけられる。そこから始まる、全世界を股にかけたカンニング犯罪の物語。

“カンニング”をクライム(犯罪)映画にまで発展させた画期的な作品で、スリリングな展開と巧みなカメラワークで130分間飽きることなく観られる。
一方で、格差社会および学歴社会問題を突きつける作品でもある。先の展開がすごく気になるにもかかわらず、全く応援できない不思議な感情が続いた。才能と努力が、誰かの悪意や金、運に負けることがあることも本作は示している。胸糞といってもいい。

正直、主人公には共感しない。特にグレースとの関係は酷く、不可解。不可解だが、スリルとストーリーの両輪を回していくリンは善と悪を併せ持った人物で、生まれ持った度胸強さと頭脳、努力で全てを“やり抜く”。その姿はシンプルに格好良い。

胸糞で不可解なストーリーでも最後まで観られたのは、堅実で愛情深い父親と、圧倒的に不運で正しい怒りを持ったバンクというクラスメイトの存在があったからだと思う。
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