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羊飼いと屠殺者のqqfowlのレビュー・感想・評価

羊飼いと屠殺者(2016年製作の映画)
4.0
事実からインスパイアされたフィクションで、原作は小説。作者は元南アフリカの弁護士。

「看守の青年が7人を衝動的に殺した」事件の部分はフィクションだが、看守は羊飼いと屠殺者の役割を同時に果たし、そのことが恐ろしいトラウマになっていたという肝の部分は、本物の看守へのインタビューをもとにしていたようだから、かなり事実に忠実だったのではないかと思う。

小説の作者へのインタビューが興味深かった。
https://www.nzherald.co.nz/nz/friends-in-dawns-shade-killer-as-the-sun-rises/DDWHNYZKBQ3RKAJ7L43JNQOMZU/?c_id=1&objectid=11596131

↑を読むと、看守が語った内容と、作者(元弁護士)が南アフリカで手がけた事件を組み合わせて、「レオン」という青年を創作したのかなという気がした。でも、だとしたら、それぞれの事実とはちょっと距離があるというか。映画を見ていて、これが本当なら、日常的に死刑に立ち会っているうちにパブロフの犬みたいな回路が脳にできてしまって、疲れ切ってふらふらのときにトリガー音を聞くと、もうその辺の人を誰でもいいから殺してしまうというわけ?!こわすぎ!と思ったんだけど、実際そこまでやった看守がいたわけじゃないみたいだし。作者が南アフリカで手がけた一時的心神喪失の事件は、犯人は自分が恨んでた人を殺したみたいだし。そう思うと、あのセンセーショナルな事件の部分は、どう考えたらいいのか……という気がしなくもない。

それでも、羊飼いと屠殺者の状況に置かれるのがどれだけ非人間的なことか、作者が言いたかったことは十分伝わった。

と、人種問題に疎い私は思ったんだけど、当事者からするとそう単純ではないみたい。作者は、アパルトヘイトの話じゃないのに映画はそうなっちゃって残念と言っているし、海外の批評には、黒人、白人の描かれ方に対していろんな意見があった。
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