【フール・オブ・セイラム】
1692年にアメリカで起きた、20名以上の処刑・獄死者を出したというセイラム魔女裁判を元にしたアーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」の映画化作品。先日『ロード・オブ・セイラム』をみたので思い出し再見しました。
戯曲が話題になった当時、1958年にも映画化(『サレムの魔女』)されていますが、そちらはまだ機会なくて未見です。
ここまで愚劣だったか!と実にイヤーな気持ちになりました。始めは登場人物たちの、あまりの愚かしさに笑っちゃうのですが、それがイラつきに変わり、最後はキリスト教の傲慢さに虫唾が走りました。
同じ神を信じている者同士、一方が一方を法の名の元に謀殺する。殺される方は神の名を唱えながら死んでゆく。何とバカバカしくおぞましいことか。そこをハッキリ描いている、という点では価値があるのでしょうけれど。見て、目を覚ます人がいるかもしれないし。
神を創ってしまった人間は、悪魔も創らざるを得ないのでしょう。神が許さぬ欲や迷いを、悪魔のせいにしちゃえば都合もいいし。神信じようが信じまいが誰だって湧いてくる心なのに…。
これだけ禁欲的なピューリタンの暮らしに抑圧されたら、若さ迸る少女たちが魔術遊びで発散させたくなるのはわかりますけどね。要はガス抜きでしょう。それくらい認めてやれば誰も死ななかったのに…。
で、神も悪魔も根拠などないから、事件が大ごとになっても法の執行者は、少女の証言だけを盲信するしかない。
事件の首謀者、聖女のように祭り上げられたアビゲイルの嘘により、犠牲者がみるみる増えてゆくのに誰も止められない…つまり、これを物語として終わらせることは誰にもできないわけだ。で、20人以上も冤罪で殺される。ホント、恐ろしいことです。
アビゲイルを演じるウィノナ・ライダーが、後ろ向きに元気いっぱい!後に万引き犯となる兆しのような役どころ (苦笑)。あの巨乳をチラ見せしたら、より隠れ毒婦らしさが出たと思いますね、残念。
彼女に翻弄されるD・D・ルイスは、あまり出演作みていませんでしたが、この頃はちょっとクドいけど、美しいですね。彼の妻役、ジョアン・アレンさんも数作しかみていませんが、作品ごとにカメレオンの如く変化して巧いなあ、と思いました。
全体、つくりとしては、きっちりした映画ですね。
<2013.11.5記>