Elijah

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男のElijahのレビュー・感想・評価

5.0
ファーストデイにて劇場鑑賞。
史実に「インスパイア」された物語で、本国スウェーデン版原題は「Borg」単独なので(「Borg McEnroe」或いは「Borg vs McEnroe」は英題)、どちらかと言えばマッケンローは客演的な描かれ方に思える。
どこまでボルグ本人がこの作品に携わったのかは判らないけれど、少なくともボルグの少年時代を彼のご子息が演じているので協力的だったことが窺える。
淡々と描かれていくけれど熱いものが確かに伝わってくるし、製作陣がものすごく真摯かつ丁重に描いたことも伝わってくる作品だった。
ボルグの試合前や日常生活に於いても強迫観念めいた徹底したこだわりと完璧主義な様子にチェスプレイヤーのボビー・フィッシャーが重なる。
そしてビヨン・ボルグとジョン・マッケンロー、この2人の根っこの気質は実は似た者同士だったのだ、と。
ボルグがウィンブルドン選手権の5連覇を賭けた男子シングルス決勝戦の第4セットのタイブレーク、もうどちらが勝ってもいいとさえ思え両者を応援したくなる気持ちに何度も駆られる。
空港でのラストシーンの2人の光景に目頭が熱くなった(その直後のテロップにも)。
ボルグ役のスヴェリル・グドナソンとマッケンロー役のシャイア・ラブーフ。
両者ともにもはや本人が憑依したのではないかと思えるほどの熱演ぶりと徹底した役作りに心から拍手を贈りたくなる(両者受賞は逃したものの本国開催の第53回ゴールデン・ビートル賞主演/助演男優賞候補も納得)。
この作品に於けるスヴェリル・グドナソンの容姿が時にトム・ヒドルストンの生き写しのようだったことも付け加えておきたい。
集中力とため息と息を潜めながらまるで自分が観客席に座っているような感覚での鑑賞。
劇場で体感しておいてほんとに良かった。
松本大洋の『ピンポン』をこよなく愛する人はきっと好きになる物語だと思う(対戦相手同士にしか解り得ない空間や尊敬の念がそこにあるから)。
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