交通事故で昏睡状態に陥り全ての記憶を失ってしまった主人公が他人の肉体へと次々と乗り移っていく物語。今は亡き歌手ユ・ジェハの「愛しているから」という楽曲ををストーリーのテーマにしているからか曲調や歌詞が上手く当てはまっていて感動がしやすかった。軽いタッチで描かれるコメディがほとんどで見やすさが重視されながら愛という深いテーマを扱っているこの作品はとても見応えがある。ただのふんわりとしたコメディ作品では飽きてしまうが飽きないような工夫を凝らしていたように感じた。オムニバス形式で形の違った愛が描かれ、ちょうど良いテンポ、飽きるか飽きないかの切れ目で次のストーリーに切り替わる。さらに他作品のオムニバスと違い、全て主人公となる存在が同一人物であるという一貫性がありこの作品特有のものを感じられた。
主人公は高校生にして妊娠してしまった優等生、離婚寸前の刑事、孤独な独身の教師、夫の存在を分かっていない認知症のお婆さん、などの老若男女に肉体を移していくのだが、本来このような緩いコメディ作品なら視聴者側はあまり理由を追求はしない。しかしちょっとでも謎を解明してしまったら全てを明かす必要が出てくる。この作品を例えるとするならば謎＝袋Aとして袋Aの中に袋Bがあるとする。袋Aに触れなければ違和感は感じられないけれど、袋Aを開け、袋Bを開けなければどうしても違和感が残る。全てはっきりさせるか全てを明かさないままにするか。どちらかに偏らせないと作品自体が微妙なものになってしまう気がする。
