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蝶の眠りのnanaのレビュー・感想・評価

蝶の眠り(2017年製作の映画)
3.5


あなたに見られたくないのよ


自分が自分でなくなったら


悲しい運命のヒロイン涼子を、中山美穂が儚く演じている。

作家として女性に支持され、大学で講師を務める涼子。
離婚をしたが後悔は無い。
美人でお洒落でキャリアも充分。
誰だって憧れる存在の大人の女性。
涼やかでねっとりとした色香を纒っている。

韓国人留学生との出会いで生活に彩りが添えられる。

年下のチャネ(キム·ジェウク)。
作業を手伝って貰ううちに惹かれ合う。
美男美女。そんな言葉がぴったり。
年上の涼子を立て、優しく包み込むような笑顔に、ちょっとミステリアスな佇まい。
素敵なインテリアの涼子の自宅での二人には、うっとりするばかりだ。

年齢を重ね、欲しいものを自分で手に入れる。
そこに現れたピュアな恋。
穏やかにときめく満ちたりた日々。

幸福の真っ只中に気づく変調。
…なにか、おかしい。

遺伝性のアルツハイマー。
この人は有名人でもあるし、自分を投げられる程まで行っていない恋人が出来たばかり。

自分が自分でいられなくなる。
頼れる人はいない。
でも、これからの姿を見せたくない人が出来てしまった。

どんなに悔しいだろう
どんなに恐ろしいだろう

「あなたの事だってわからなくなる」
人として、女としての苦悩に壊れそうになる涼子。
悩んでいるうちにも病気は進行してしまう。

せつない。
せつなすぎるストーリーですが、美しい映画でした。
品があり、涙を誘う事にくどくない。
二人の醸し出す雰囲気が素敵すぎる。

格下の年下男性との恋と抗えない運命。

ドラマティックで悲しみより美しさが勝る作品だった。


衣装も素敵でした。
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