Eike

スカイライン-征服-のEikeのレビュー・感想・評価

スカイライン-征服-(2010年製作の映画)
2.9
デジタル映像の時代の功罪を感じさせるアメリカ映画。

「こりゃあ、珍品だわ」というのが正直な感想。
只の見かけ倒しのツマラン作品なら腹も立つのだろうが、本作の場合はそれ以前に理解しがたい面が多々あって、見終わった瞬間の「?」はかなり大きい。

ある夜、空から地上に降り注ぐ無数の青い光。
それは凶悪なエイリアンによる人類抹殺計画の始まりだった・・・。

本作の特徴は一切と言っていいほど「説明がない」こと。
これって公開当時に流行していた「疑似ドキュメント形式」なら分かる気もするんですが本作はそうではありません。
一応きちんと登場人物による物語の設定はあります。
LAの友人を訪ねてきた若いカップルたちが危機に直面する一昼夜を描いております。
しかしそこに「ドラマ」と呼ぶべきものはありません。
ほんとに皆無と言っていいほどに。
端的に言えば本作はこの登場人物たちが立てこもったコンドミニアムの中と周囲をあたふたと右往左往するだけなのだ。
どうも作り手側には「ドラマ」を盛り込もうとする意識すらないようなのだ(いや、本当に)。
実写部分の製作費と(約4千万円)CG関連の費用(約8億円)の間に20倍もの差がある辺りからして作り手側の狙いは明らかですね。

罪深いなぁと思うのは本作は一昔前のB級映画のように見かけがしょぼい作品にはなっていない点。
勘違いされると困るのだが本作は「スペクタクル」&「アクション」はテンコ盛り。
巨大な宇宙船も凶悪なタコ型エイリアンや巨大モンスターもガンガン出て来ます。
決して予算的には潤沢ではないのでしょうが、デジタル映像の利点を最大限に生かした画面作りは一昔前ならそれこそ十分に「超大作」レベル。
その意味では決して「見かけ倒し」の作品ではありません。

ところがどれほど派手で見栄えが良くても、そこに「物語」がなければそれは只の「絵空事」にしか見えません。
実際これほどスペクタクルシーンが豊富に盛り込まれながらもこの印象の薄さはある意味で驚きです。
さすがにそれではまずいと思ったのかラストのラストになっていきなりドラマらしきものを始めようとする(しかも何の伏線も脈絡もなしに)辺りのトンでも感覚には笑うよりもビックリ。

本作とはほぼ逆向きのベクトルで作られたイギリス映画の「モンスターズ」と比較すると面白い(?)かもしれませんね。
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