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枝葉のことのbadhabitのネタバレレビュー・内容・結末

枝葉のこと(2017年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

帰り道、無意識に背筋を伸ばして大股で歩いていた。ひたすら歩いてばかりの主人公の存在感は良い。歩く姿からも、焦燥感と苛立ちが伝わってくる。

監督の目の演技が非常に良かった。初めておばちゃんの弱った姿を目にした時の、動揺して目を離せない感じとか。

枝葉のこと。どうでもいいこと。他人とは無関係のこと。自分の人生のけじめの映画だと二ノ宮隆太郎は言っていたらしい。
誰かと一緒に観たいとか、誰かに勧めたい映画ではない。
恩人の死を前にした葛藤の日々の一部を切り取った、ある若者の人生を覗き見たような映画。
終始苛立った空気が流れていて、段々と観ている側にもその苛立ちが伝播してくる。

思い出なんてどうだっていい。だってこれからは増えていかないものなんだから。

大切な人がいなくなってしまう不安や、無力な自分への苛立ちを、誰かにわかってほしい。誰かと共有したい。でも、周りはみんな身近な人の死を粛々と受け入れている。おばちゃんがいなくなることを受け入れられない自分と、やけに現実的で冷静な周りの人物達との隔たりに愕然として、絶望する。気を紛らわそうと女を抱いても、オナニーしようとしても、いっときでさえ気持ちが落ち着かない。

たくさん世話してもらったのに、恩人に胸を張れるような人生を送れていない自分に対する苛立ち。クソみたいなやつらと、底辺同士でマウンティングしあって、枝葉の擦れ合うようなノイズに満ちた日々の中で今まさに大切な人の存在は消えようとしていて、そんな状況も、自分よりもツイてないヤツがいることを考えて自分を慰めるしかない虚しさ。苦しくて辛くて、どうしようもないなんて言葉で片付けて欲しくなくて、自分一人でもがいてる二ノ宮隆太郎の姿が人間らしくて印象的だった。

Tシャツを脱ごうとしてジャミラになってるシーンは笑いが起きてたな。
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