1940年代、日本占領下の香港を舞台としたスパイ映画。静かな時の流れの中でサスペンスが始まり、瞬間的なクライマックスを迎えたのちにまた緩やかな時間に戻っていく。緩急がすごく好き。自然に出てきた気のよさそうなオッサンとかが日本のスパイだったりして、突然ガンアクションが始めるのが最高！大股開いて闊歩している日本兵の、「大和の国から狼煙を上げて、前へ、進め！」というダサい号令が耳に残った。作品のテーマから考えると嬉しいことではないが、日本語が多く使われており、米字幕でもすんなり入ってきて観やすかった。エディ・ポン演じる敏腕スパイBlackie Lauが超格好いい。彼の分かりやすい活躍と、スカウトした家政婦の女性による内側からの情報収集の2段構えのバディ感。
好きな台詞は、母ちゃんによる「アンタ、虫も殺せないような子だったのに今は日本人を殺したいのかい！？」と「日本人殺しは男の仕事よ！」（直訳）です。死ぬ寸前かのように細い目でダルそうな顔をしながら話を聞いている娘の顔まで含めて素晴らしい。永瀬正敏が日本刀を振り回しながら、「これは日本と支那の問題ではない、俺とお前の問題だ！」と声を荒げるシーンも良かった。本作には永瀬正敏も出演しているし、音楽は久石譲であることから明らかなように、複雑な過去を描きながらも現代の日本を尊重してくれている。反日映画だー！とまた一部の人間が騒いで公開されないなんてことにならないことを望む。アン・ホイは今まで「桃さんのしあわせ」しか観たことなかったけど、これは追うべき監督だと思った。
