Omizu

血観音のOmizuのレビュー・感想・評価

血観音(2017年製作の映画)
3.2
【第54回金馬奨 作品賞他全3部門受賞】
『GF*BF』のヤン・ヤーチェ監督作品。その年2位の大ヒットとなる興行成績をあげた。金馬奨では6部門にノミネートされ、作品賞、主演女優賞(恵英紅)、助演女優賞(文淇)の3部門で受賞した。

かなり期待して観たものの、イマイチ消化不良な部分の残る作品だった。エキセントリックなキャラ造形、美術を含めた上流の雰囲気という一つ一つの要素はいいものの、脚本に粗が多く感情表現もよく分からないことになってしまっている。

骨董商の棠家を中心としたクライム・サスペンスで、事件をきっかけに棠夫人が本性を発揮していく。それとともに棠夫人の長女と次女(とされている)三人の疑心暗鬼合戦が加速していく。

一介の骨董商の女がのし上がっていくピカレスク・ロマンとしての魅力はあり、主演の恵英紅のダークな美貌が恐ろしい。自由奔放な長女、何を考えているか分からない次女とエキセントリックな、型にはまらないキャラ造形は面白い。

テンポがよく、捻った脚本はスピーディーでいいが、語られ切っていない部分にもやもやする箇所が多かった。ミステリアスというよりも消化不良。

またキャラ造形はいいものの、現実にはいなさそうな非現実感から抜け出せていない。物語のキーとなる長女と次女の背景がよく分からない。感情表現をすっ飛ばしたキャラとして描いているので感情移入しようがない。

イケてるカメラワークだなと感じる部分は多く、画面の力は強い。凝った演出も面白いが、あまり必然性を感じない。

ルックは魅力的なのに骨格がグラグラ。この話を語るには足りていない部分が多すぎる。期待していただけに残念。
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