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判決、ふたつの希望のSY3KRのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.5
レバノンのベイルートを拠点として活動するジアド・ドゥエイリ監督が手がけたサスペンス・ドラマ。レバノン史上初めて、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる快挙を成し遂げた。

とにかく完成度の高い映画。トニーとヤーセルの日常的な個人間トラブルを扱っているように見せて、その中にレバノンの複雑な社会・政治的背景を巧みに取り込み、物語をどんどんスケールアップさせていく。映画が終わる頃にはトニーとヤーセル同様、自分がどこに立っているのかすら分からない。

実際の戦争もこれと同じだ。国家や第三者が勝手な利益を主張し、話はどんどん違う方向へと逸れていく。本当の当事者はないがしろにされ、傷つけられ、最後には忘れられる。こうした悲劇性を訴えかけながら、最後にはそれを許す人の強さをもしっかりと描き切っている。

これだけの重いテーマを扱いながら、本作は時にユーモアを発揮し、最後まで娯楽色を失わない。クセの強い弁護士・裁判官の演説や、あまりにも唐突すぎる大統領登場シーンには、不謹慎だと分かっていても笑ってしまった。脚本・演出のバランスがとにかく巧みで、感動モノだ。

レバノンが舞台だからこそ成し得た、珠玉の一作です。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:86%
・観客支持率 :88%
「本作は、お馴染みの法廷ドラマの枠組みを利用し、現代の中東政治について考えさせられるだけでなく、手に汗握るような辛辣な主張を展開している。」
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